昨年11月に兵庫県議を辞職した竹内英明氏(50)=姫路市=が亡くなり、政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏が、竹内氏が県警の捜査対象になっているという趣旨の発信を交流サイト(SNS)などで重ねたことについて、村井紀之本部長は20日、「全くの事実無根であり、明白な虚偽がSNSで拡散されていることについては極めて遺憾」と述べた。
県議会警察常任委員会で、発信された内容が事実かどうか確認する委員の質問に答えた。警察常任委での答弁は通常、部長級幹部が担当しており、トップの本部長が発言し、さらに個別の捜査に言及するのは異例。県警としての姿勢を明確に示すことで、同様の情報のさらなる拡散を抑える狙いがあるという。
竹内氏は元西播磨県民局長(昨年7月に死去)が作成した告発文書を調べる県議会調査特別委員会(百条委員会)の委員だった。昨年11月の知事選直後に辞職し、今月18日夜、死亡が確認された。
関係者によると自死とみられ、19日に報道が流れると、立花氏はSNSや動画投稿サイトで「(竹内氏は)県警の任意の取り調べを受けていた」「近く逮捕される予定だった」という趣旨の発信をした。
警察常任委では、村井本部長が「事案の特殊性に鑑み、私の方から答弁する」と前置きし、これらの発信を「事実無根」「虚偽」と否定した。名誉毀損容疑での捜査の可能性についても質問があり、知事選を巡る他の告訴、告発事案と合わせて藤森大輔刑事部長が言及。「県民の負託に応えられるよう法と証拠に基づいて適切に対応してまいりたい」と述べた。
その後投稿は削除されるなどしており、立花氏は動画投稿サイトの自身のチャンネルを更新。「兵庫県警御免なさい。竹内元県議のタイホは私の間違いでした。」と題し「警察の逮捕が近づいていて、それを苦に自ら命を絶ったということについては間違いでございました」などとした。
一方、斎藤元彦知事も20日、報道陣の取材に応じ、竹内氏が亡くなったことについて「痛恨の極み。時に厳しい質問をいただいたが、兵庫を良くしたい思いの表れだったと思う」と話した。竹内氏に対する誹謗中傷が拡散している現状については「SNSは、いい使い方、冷静な使い方をすることが大事」とした。
常任委での委員と県警幹部の主なやりとりは次の通り。
(黒田一美委員)
2日前に、同僚の県議会議員だった竹内氏が亡くなった。SNSで言葉の暴力が拡散して、家族が重い精神負担を抱えていると私たちは把握していた。ところが、亡くなった直後にも、SNSで「警察から任意の取り調べを受けている」「近く逮捕される」みたいなことが拡散された。警察常任委員会の公的な場で、しっかりと(事実の)確認をしたい。
(村井紀之本部長)
こういう場で個別案件の捜査について言及することは通常、差し控えているが、事案の特殊性にかんがみ、私の方から答弁する。竹内氏については、容疑者として任意で調べをしたこともないし、ましてや逮捕するといったような話は全くない。全くの事実無根であり、明白な虚偽がSNSで拡散されていることについては、極めて遺憾であると受け止めている。
(黒田委員)
こんな事実でない、ひどいことは許せないと思う。名誉毀損(容疑)などで取り締まりを求めたい。
(藤森大輔刑事部長)
昨年行われた県知事選に関連していろいろな出来事が起こっており、告訴、告発といった形で警察に処罰を求める動きがあるのも事実。警察としては、受理した告訴、告発事案、その他の事案も含め、迅速に捜査を行うべく、事案の内容やそれを裏付ける証拠をできる限り早期に把握し、方針を立てて順次、捜査しているところだ。引き続き、県民の負託に応えられるように、法と証拠に基づいて適切に対応して参りたい。
(黒田委員)
兵庫県警として、威信にかけて速やかに捜査を行い、はっきりした対応を強く求めたい。
(藤森刑事部長)
個別の案件についてどのような捜査を行っているかということについて、一つ一つ答えるのは適当ではない。繰り返しになるが、県警としては、法と証拠に基づき、適切な捜査を推進して参る。
(松本裕一副委員長)
(竹内氏に対するSNSの発信について)先ほど「警察の捜査対象であった」とか「逮捕が目前である」ということに関しては、本部長の方から明確にデマであることが示されたわけだが、既に、このような情報が多くSNSで拡散されている。実際には、竹内氏への誹謗中傷であると同時に県警に対してのデマであるともとれる。どのように対応していくのか。
(藤森刑事部長)
警察に対するデマという評価について、私がお答えするのはこの場で差し控える。一般論として申し上げると、警察というのは捜査機関であり、公平、中立な立場で捜査を遂げる立場であるので、警察が、警察に対して被害届を出して捜査をしていくのは、なかなかちょっととりづらい対応なのかなと考えられる。実際に、竹内氏に対するそういった言動、言論があるので、それに対して捜査機関たる警察としてどのような対応をしていくのかというのがわれわれの基本的なスタンスかなと考えられるところだ。