豆腐ビールのイメージを手にする長谷川慎一さん=豊岡市城崎町湯島
豆腐ビールのイメージを手にする長谷川慎一さん=豊岡市城崎町湯島

 城崎温泉街で唯一の豆腐店「とうふ処(どころ)はせがわ」(兵庫県豊岡市城崎町湯島)が、豆腐の原料となる豆乳を使った「豆腐ビール」の商品化に成功した。豆腐の新たな価値を探ろうと、豊岡市出石町の酒造会社と共同で開発。「豆腐の日」である10月2日からの醸造開始に向けてクラウドファンディング(CF)を実施しており、11月ごろの発売を目指す。(丸山桃奈)

 同店は1950年に開業。2代目の長谷川三好さん(73)が昔ながらの製法を踏襲し、豆腐や油揚げ、がんもどきなどの店頭販売と地元旅館への卸売りを中心に展開している。かつて温泉街に豆腐店は数件あったが、スーパーやコンビニとの競合で次々に廃業し、現在は同店のみとなった。

 それでも若者の豆腐離れは進み、売り上げは減少。そんな状況を打破しようと、2003年から「おからのかりんとう」、08年には「豆乳ドーナツ」を販売してヒット商品に育てた。

 17年に長男の慎一さん(35)が加わって、さらに豆腐関連の新商品づくりを強化。新型コロナウイルス禍の影響を受けながら、23年には豆乳あんぱんや豆乳シフォンケーキを開発し、店内に飲食スペースも新設した。その後、原材料が高騰し、安いイメージの豆腐は値上げできる状況ではなく、さらなる売り上げの減少を避けられないようになった。

 コロナ禍が一段落してインバウンド(訪日客)が回復する中、慎一さんは「おもしろいことがしたい」と模索。地ビール製造会社「出石城山ビール」(同市出石町内町)と知り合い、「豆腐でビールが造れるのではないか」と共同で取り組みが始まった。

 同社は試験醸造を繰り返した。小麦麦芽を50%以上使うドイツの伝統的な「ヴァイツェン酵母」にたどり着き、豆乳の良さを引き出すことができたという。同社は「これまで豆腐や豆乳を扱った経験がなく、独特の風味をどうすれば引き出せるかを意識しながら、おいしいビールが造れるか試行錯誤した」と話す。

 商品名は「城崎とうふクラフト~湯上がり美人~」(330ミリグラム瓶、650円)。白濁色で大豆由来の甘みを生かし、フルーティーな香りとジューシーな味わいに仕上げた。アルコール度数は一般のビールより低めの3・5%。酒類に強くない人でも飲みやすくし、美容や健康意識の高い女性を照準にした。

 新商品は11月ごろから、同社の直営店とはせがわの店頭で販売し、2店舗限定で生ビールも提供する。長谷川さんは「ビール片手に温泉街でそぞろ歩きを楽しんでもらいたい」と目を細める。

 CFは専用サイト「キャンプファイヤー」で実施中。目標金額は200万円。30日まで。とうふ処はせがわTEL0796・32・2769