豊岡市日高町出身の冒険家、植村直己さんにちなんだ「植村直己冒険賞」の授賞式が7日、同町祢布の日高文化体育館で開かれた。2024年度受賞者で、洞窟探検家の吉田勝次さん(58)=愛知県在住=が、過酷な体験談や探検の魅力を語った。(大高 碧)
未知の世界に挑んで多くの人に夢や希望、勇気を与えた人、団体をたたえようと旧日高町が主催し、29回目となった。式典には近隣住民や地元の中学生ら約750人が駆け付けた。
吉田さんは大阪府出身で、28歳のころに洞窟に魅了され、世界約30カ国で千カ所余りを冒険してきた。建設会社を営む傍ら、洞窟探検に関わる「日本ケイビング連盟」の会長なども務める。
同賞に洞窟の探検家が選ばれるのは初めてで、選考理由では「大けがを負うなどの困難に見舞われながらも好奇心に従い、入念な準備を行って人類未踏の洞窟探検をする姿は、植村直己の生き方に通ずるものがある」と評された。
式典では、豊岡市日高町の府中小の3、4年生が合唱曲「チャレンジ」を披露し、吉田さんに門間雄司豊岡市長からメダルや盾などが手渡された。
吉田さんは、映画「植村直己物語」を見て植村さんのファンになり、何度も見返したことに触れ「好きだからやり続ければいつか植村さんのようにすごい冒険家になれると思っている」と憧れを口にした。
「地球上に残された過酷な世界!それは未知未踏!洞窟!」をテーマにした講演では、吉田さんがラオスで発見した世界最大級の可能性がある洞窟での体験を紹介。計3回にわたって探検し、体調不良に見舞われながらも24年に新たに約550メートルの未踏部分を見つけた感動などを伝えた。
高さ22センチ、幅45センチの隙間を通り抜けるなど死と隣り合わせになりながら「奥にどんな世界があるのだろうという好奇心だけで前に進んできた」と話した。
生徒らは「小さいころの将来の夢は」と尋ね、吉田さんは「子どものころは動物を100匹ほど飼っていたので、生き物の専門家になりたかった」と明かした。式の最後には「宇宙や月に洞窟があるのなら行ってみたい」と語り、さらなる未知未踏の冒険への意欲をのぞかせた。