PCR検査薬の性能評価に使う模擬検体
 PCR検査薬の性能評価に使う模擬検体

 新たなウイルス感染症が広がり始めた際、感染者の発見に役立つPCR検査を早期に使えるようにするため、国立医薬品食品衛生研究所などが性能評価に使う模擬検体を開発している。病気を起こさない疑似ウイルスと、唾液や鼻の粘膜を模した液体を混ぜたもので、実際の患者の検体が集まるのを待たずに開発を進められる体制を目指す。

 PCR検査は、検体に含まれるウイルスの遺伝子を大量に増やして検出する。新型コロナ禍の初期には感染者や接触者を見つけ、感染の連鎖を断ち切るのに活用された。ただ日本では準備に時間がかかった。

 こうした教訓から、同研究所は2023年度に模擬検体の開発を始めた。コロナ禍のように発生国からウイルスの遺伝情報が公開されれば、検査に使う部分の遺伝物質「リボ核酸(RNA)」を人工的に合成して病気を起こさないウイルスの殻に入れ、人の粘液を模した液体と混ぜる。

 疑似ウイルスは作製・保存方法の見通しが立ち、国内の企業が製造と販売を担う予定。粘液を模した液体は献血事業を担う日本赤十字社から提供された血清から作製する。