日本大アメリカンフットボール部の寮で覚醒剤と大麻を所持したとして、3年生の部員が警視庁に逮捕された。大学側は部員を無期限活動停止処分とし、事件を受けて会見した林真理子理事長は「大変に遺憾。心から深くおわびする」と述べた。

 同部は大学日本一を決める甲子園ボウルを21度制覇した名門だが、2018年、関西学院大との定期戦での危険な「悪質タックル」が社会問題になった。チームを再建する途上で新たな不祥事が発覚した点を、関係者は重く受け止めるべきだ。

 違法薬物は逮捕された部員の部屋で見つかったという。競技スポーツ担当の沢田康広副学長は、他部員の関与について「そのような事実は把握していない」とした。だが寮内での生活実態の解明は欠かせない。日大は捜査に協力するとともに、再発防止のためにも、事件の背景を自らの手で明らかにしてもらいたい。

 不可解なのは、問題発覚後の大学当局の鈍い対応だ。昨秋以降、寮内での大麻使用が疑われる情報が複数回にわたって寄せられたという。

 昨年11月下旬、部員の一人が「大麻のようなものを吸った」と申告した。ところが大学側は厳重注意するにとどめ、警察に届け出なかった。今年7月6日に大学が寮内で不審物を発見した際も、18日に匿名の告発が届いて初めて警視庁に報告した。元検事の沢田副学長は大麻の可能性があると考えていたという。

 これでは、隠蔽(いんぺい)する意図を疑われても仕方がない。大学当局の社会常識や危機意識が欠けていたと言うほかない。

 通報の遅れについて、沢田副学長は「反省を求め、自首させるのが大学の責務だと考えた」と弁明した。しかし何より大切なのは学生の心身である。大麻には依存性があり、脳の成長を阻害するとされる。覚醒剤使用の導入にもなる。学生を薬物から守るには、早急に警察に相談するのが適切だったのではないか。

 日大では21年、田中英寿元理事長らが逮捕される脱税事件が起き、体制刷新のため、昨年7月に作家の林理事長が就任した。だが今回の違法薬物情報は、林氏にすぐに報告されなかった。組織体質の不透明さやガバナンス(組織統治)の欠如は、以前と変わっていないとの印象を持たざるを得ない。日大は組織の改革を根本からやり直さねばならない。

 若者の薬物乱用は深刻さを増している。ネットには「有害性がない」などの誤情報があふれている。大学スポーツ界でも大麻関係の事件が相次ぎ、今年も東京農大ボクシング部員や朝日大ラグビー部員が逮捕された。若者と薬物を断ち切る取り組みを社会全体で強める必要がある。