各省庁の予算要求に歯止めをかけるどころか膨張をあおりかねない。政府が決めた2024年度予算の概算要求基準である。
岸田文雄政権の掲げる「新しい資本主義」関連の施策に4・2兆円規模の特別枠を設ける。各省庁に政策判断で予算を増減できる経費の1割削減を求めた上で、削減額の3倍分までの要求を特別枠で認める。
物価高対策や子ども政策に関する予算は金額を示さずに要求できる。全体的な歳出の上限は定めておらず、事実上の青天井といえる。
新型コロナウイルス禍に直面したこの3年、関連施策や各種の交付金で歳出の膨張に拍車がかかった。しかし「5類」への移行で、社会経済活動は正常に戻りつつある。
政府は6月、経済財政運営の指針「骨太の方針」に、膨張した歳出を「平時に戻していく」と明記したばかりだ。財政規律を立て直すため、各省庁は政策の必要性や優先度を厳しく見極めねばならない。
今回設ける特別枠の対象には、働き手の能力を高めるリスキリング(学び直し)や脱炭素関連などを想定している。テーマを決めることでめりはりの利いた予算編成をアピールする狙いだが、かなり幅は広い。
特別枠は以前から設けられてきたが、テーマと関連が薄い政策であっても、各省庁が理屈をつけて押し込むのが常態化している。これでは予算規模は膨らむばかりだ。
ただでさえ、24年度予算には巨額の膨張圧力がかかる。社会保障費の自然増は5200億円に上り、政府が「別枠扱い」とする防衛力強化の一環として、防衛庁は過去最大の7兆円台を要求する。その他の分野も物価高騰や人件費上昇の影響は避けられない。要求総額は10年連続で100兆円を超える公算が大きい。身の丈に合った範囲に抑えられるのか、首相の指導力が問われる。
経済活動の回復で多少の税収増は見込めるが、国債頼みの財政構造は変わらない。政府が今後7年間の増額を明言した防衛費も、財源となる増税は24年実施の見送りが濃厚だ。巨費をどこから捻出するのか。
政府は、財政の健全性を示す国と地方の基礎的財政収支を25年度に黒字化する目標を掲げる。だが、経済成長率を高めに設定しても25年度は1兆3千億円の赤字になると、当の内閣府が試算している。
1千兆円もの長期債務残高を減らすには、例外や抜け穴だらけの概算要求基準を見直す必要がある。
過去のコロナ関連施策には実効性に乏しいものも目立った。予算規模ありきの発想から脱却し、国民生活の向上や経済成長に結びつける施策を練り上げるべきだ。























