芸能大手ジャニーズ事務所の創業者で前社長の故ジャニー喜多川氏による性加害問題を調べていた外部専門家の「再発防止特別チーム」が、報告書を公表した。長期間にわたり、喜多川氏が多数のジャニーズJr.の少年に対して性暴力を繰り返してきた事実を認定した。
併せて、ジャニーズ事務所が同族経営の弊害を防ぎ、「解体的な出直し」を図るには、喜多川氏のめいに当たる現社長の藤島ジュリー景子氏が経営責任を取って辞任すべきであると提言した。
調査結果を受け、ジャニーズ事務所は7日にこの問題で初めて会見を開く。藤島社長はこれまで、性加害について公式サイトの動画で「知らなかった」などと述べるにとどまり、社内調査もしてこなかった。
会見で藤島社長は加害の事実を明確に認め、自ら経緯を説明し、被害者に真摯(しんし)に謝罪すべきだ。ガバナンス不全の責任は極めて重く、辞任は当然である。何より、被害者救済の取り組みを急がねばならない。
特別チームは、ジャニーズ事務所が設け、前検事総長の林真琴弁護士らが調査に当たった。被害を申告した元所属タレントや事務所幹部らへの聞き取りなどを通して明らかになったのは、アイドルとしての成功を夢見る少年たちの心理につけ込んだ喜多川氏の卑劣かつ罪深い行動だ。
報告書によると、喜多川氏による性暴力は1950年代にさかのぼる。ジャニーズ事務所では70年代から2010年代まで40年以上、多くのジャニーズJr.に性加害をしていた。少なくとも数百人の被害者がいるとの複数の証言も得た。
性加害の根本原因は、喜多川氏の性嗜好(せいしこう)異常にあるとした。さらに、喜多川氏とともに経営を主導してきた姉の故藤島メリー泰子氏が、弟による性加害を知りながら「徹底的な隠蔽(いんぺい)を図ってきた」ことが被害拡大の最大の要因だと指摘した。メリー氏は藤島社長の母親でもある。
事実認定とともに、特別チームが被害者救済の具体的な提案をした点は評価に値する。「被害者救済委員会」で補償の要否や金額を判断することや、時効が成立している被害者も救済対象とするよう明示した。
心身の苦痛や告発への中傷に苦しんできた被害者にとって、大きな前進といえよう。ジャニーズ事務所は提言を具現化する必要がある。
報告書は、新聞やテレビなど多くのメディアが正面から問題を取り上げなかった点も厳しく批判した。本紙も含め重く受け止めねばならない。被害者の性別にかかわらず、性暴力は深刻な人権侵害であり、決して許されないことを再認識し、報道機関としての責務を果たしたい。