全国の千を超える金融機関とつながり、資金のやりとりを担う「全国銀行データ通信システム」で障害が発生し、復旧までに丸2日かかった。10日以上が経過した現時点でも詳しい原因は不明で、利用者の不安はぬぐえないままである。

 影響を受けた取引は500万件を超える。他の銀行へ振り込みができなかったり、児童手当が振り込まれなかったりするなど、企業活動や市民生活に混乱を及ぼした。重要な社会インフラである金融機関の信頼に大きな傷が付いた。原因究明と再発防止が急がれる。

 システムは全国銀行協会傘下の「全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)」が運営する。大半の銀行、信用金庫、農業協同組合などが接続する資金決済の要である。1日当たり12兆円超が取引されている。

 本来なら不要の振込手数料や、送金遅れによる延滞金など、実害が生じた利用者は数多い。全銀ネットと各金融機関は誠実かつ柔軟に補償に応じるべきだ。

 障害は10日、三菱UFJ銀行など11の金融機関で起きた。システムと各銀行を結ぶ「中継コンピューター」に不具合が生じたのが原因とされる。全銀ネットは2029年までに20回以上に分けてシステム更新を予定し、その第1弾としての作業を行っていた。

 会見などによると、東京と大阪の拠点で同時に更新したため、片方がトラブルを起こした際の代替機能が働かず復旧も難航したという。エラーが出た工程を飛ばすようにしたところ、正常に動くようになったという。ただし、応急措置でしのいでいる状況だ。

 全銀ネットのシステムは1973年の稼働以来、利用客に影響が出る障害が起きたことはなく、「優等生」として高い安全性を誇ってきた。それだけに、緊急事態への備えに甘さがあったのではないか。

 銀行のシステム障害では、2021年のみずほ銀行のケースが記憶に新しい。経営陣がシステム運営を軽視したことが原因の一つと金融庁は指摘している。

 今回、全銀ネットの障害については、システム構築などを外部の企業に過度に依存していたためではないかとの指摘もある。技術者の育成や配置を含め、管理運営体制の徹底検証が不可欠だ。

 送金障害が起きた金融機関の中には、トラブルが発生した際のノウハウが不十分なために、代替処理ができなかった例もあるようだ。システム障害をゼロにするのは難しい。顧客と直接向き合う各金融機関はリスクへの備えをしっかり固める必要がある。