アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれていた国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が閉幕した。会議では「化石燃料からの脱却」などを進めるとする成果文書を採択した。

 これまでは石炭火力発電の段階的削減という合意にとどまっていた。削減の対象を石油や天然ガスを含む化石燃料全体に広げた点は、大きな前進だったと言える。

 再生可能エネルギーについても、2030年に世界の発電能力を3倍にするとの具体的な数値を初めて示した。気候変動を抑えるため、世界が脱炭素へと大きくかじを切る起点となり得る成果文書となった。

 ただ、この文書に沿った取り組みを進めるのは、それぞれの締約国である。現状では目標数値が大きく異なる各国が実効性のある新たな排出削減目標を設け、それを着実に達成していく努力が求められる。

 地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」では、産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑えるとの目標を掲げた。ところが今年は記録上最も暑い1年となったほか、世界各地で大雨や熱波、森林火災が増えるなど気候危機はむしろ深まっている。

 今回の会議では、目標実現への進捗(しんちょく)評価を初めて行った。現状ではパリ協定の目標は到底実現できないとの厳しい認識を各国が共有した。改善させるには、世界の温室効果ガス排出量を19年と比べ30年に43%減、35年に60%減と大幅に減らす必要があると求めた。50年までの排出実質ゼロに向けて、この数値はぜひとも達成しなければならない。

 各国の具体策では、エネルギーシステムの化石燃料からの脱却を20年代に加速させ、石炭火力発電に関しては、排出削減対策が講じられていない施設の「段階的削減に向けた努力を加速する」とした。多くの国が求めた「廃止」に比べ後退した表現であり、次回以降、さらに踏み込んだ合意を求めたい。

 会議に合わせ、米国や日本は世界の原発発電能力を3倍に増やすと宣言した。同意したのは計23カ国で、再生可能エネルギーを3倍にする宣誓に合意した123カ国に比べはるかに少ない。日米などは福島事故の反省も踏まえ、「原発は再生エネの導入を妨げる」との批判に真摯(しんし)に耳を傾ける必要がある。

 日本は30年度の温室ガス排出量を13年度比で46%減らす目標を掲げるが、いまだに石炭火力への依存度が高い。燃焼時に二酸化炭素(CO2)が出ないアンモニアなどを燃料に混ぜる対策を掲げるが、効果を疑問視する見方もある。政府は石炭火力の廃止も含め、化石燃料脱却へエネルギー政策を転換すべきだ。