能登半島地震はきょうで発生から1カ月になる。
災害関連死を含めた犠牲者は230人を超え、住宅被害は石川県内だけで4万5千戸近くに上る。避難所には今も約1万人が身を寄せる。
半島を貫く国道をはじめ各地の道路が土砂崩れなどで寸断され、復旧作業を阻む。中学生が親から離れて集団避難するなど過去の自然災害では異例の対策も取られた。
ライフラインの早期復旧に加え、住まいと職の再生が見通せなければ、災禍を生き延びても人々は明日の希望を抱けない。国や自治体は安定した生活が取り戻せるまでの道筋を早急に描かなければならない。
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石川県は、3月末までに1万3900戸の住宅を確保する方針を示した。全壊などで直ちに必要な住まいは9千戸以上とされ、数字の上では十分な量になる。
しかし半分以上の8千戸は富山や愛知など県外の住宅が占める。平地が限られ仮設住宅を建てる適地が少ないなどの地理的な要因はあるにせよ、今後、道路や水道などの復旧が進めば、地元で確保できる戸数をもっと増やすべきだ。
■高齢化に留意して
生活環境の激変は被災者の心身に多大な影響を与える。輪島や珠洲(すず)など被害が大きい市町の65歳以上の高齢化率は50%前後と、県平均を大きく上回る点に留意する必要がある。
石川県は現在、ホテルなど生活環境の整った2次避難先に移るよう、被災者に呼びかけている。その後に仮設住宅や、既存の賃貸住宅を活用するみなし仮設に移り、2年の期限を迎えれば、さらに災害復興住宅などへの転居が必要となる。
29年前の阪神・淡路大震災では、仮設や恒久住宅への転居に伴い、隣人同士や地域とのつながりが絶たれ、災害関連死や孤独死を出す一因となった。県外への移転であっても可能な限り集落単位で住めるよう、自治体による意向把握や適切な住宅とのマッチングが欠かせない。
県は今回、「石川モデル」と称して、まとまった空き地に数十戸単位で木造長屋式の仮設住宅を建設する。プレハブより工期は長くなるが、公営住宅にも転用できる。馳浩知事は「地元を離れて暮らす被災者が故郷に帰る」との理念を掲げ、みなし仮設や県内外の公営住宅から能登の仮設への転居も可能とした。
耐久性を高めた仮設には、賃料を払ってそのまま住めるようにする選択肢も検討に値する。地域コミュニティーの再生にも結びつく。
■職人の集積維持を
今回の地震で被災した新潟、富山、石川、福井の4県は、立地企業の99%以上を中小が占める。被害額は数千億円規模とみられる。
中でも、能登の暮らしを支える柱は輪島塗などの伝統産業や農林水産業、観光業だ。地域の歴史文化や天然資源に根差し、おもてなしの心や技能を代々受け継いできた。
輪島塗を例にとれば、完成までに100近い工程があり、輪島市やその周辺に専門の職人が集積する。全焼した「朝市通り」に自宅兼作業場を構える例も多く、大半が焼失や全半壊の被害を受けた。事業者でつくる協同組合は、製造の再開には1、2年以上かかるとみている。
職人の集積がなくなれば産業そのものの存続が危ぶまれる。能登での住宅再建が急がれる理由でもある。
政府は伝統工芸品の事業者向け補助策を打ち出した。製造工程の共同化や新たな販売経路の開拓など、業界全体の持続性を高める施策を練り上げて、事業者や職人たちの再建への意欲を高めてもらいたい。
能登では海底隆起で多くの漁港の機能が失われた。新潟、富山両県では液状化被害による住宅の全半壊も多数に上っている。
政府はきのう、岸田文雄首相がトップを務める復旧・復興支援本部の初会合を開いた。地震被害の全容把握を急ぎ、きめ細かな支援策を講じるとともに、現地の実情に応じた政策決定ができるよう、地元自治体への権限移譲も進めるべきだ。
























