2024年度から1・59%のプラス改定が決まっている介護報酬で、介護保険サービスごとの配分が決まった。団塊世代の全員が75歳以上になる「2025年問題」が迫る中、人手不足で在宅介護が先細りする懸念もあり、不安解消には程遠い。

 担い手確保を進めるため介護職員の賃上げに重点配分する一方、訪問介護サービスは基本料部分を引き下げる。例えば20分未満の身体介護、20分以上45分未満の生活援助の報酬はいずれも1回当たり40円下がる。

 22年度の介護事業経営実態調査によると、訪問介護など在宅サービスは7・8%の黒字だった。厚生労働省はこれに基づき減額措置を判断したが、実態を反映しているとは思えない。

 信用調査会社の統計によると、23年の訪問介護事業者の倒産は過去最多の67件を記録した。黒字の事業者も、人手不足のために管理職や事務スタッフが訪問業務を兼ねるなどしているためだとの現場の声もある。

 訪問介護の事業者が足りない地方は多い。一方で人生の終盤を自宅で過ごしたいと望む人は増えている。訪問介護の報酬を減らすことで、担い手不足がより深刻になりかねない。

 職員が働く環境を改善する事業者に報酬をプラスする措置も盛り込んだが、地方には環境整備に投資する余裕がない小規模事業者も多い。改定により必要なサービスを受けられない「介護難民」が増えないか、影響を慎重に見極めねばならない。

 経営実態調査で1%の赤字だった特別養護老人ホームなど施設系サービスには報酬単価を引き上げる。人手不足で定員を充足できない施設が増えており、サービス立て直しには労働条件の抜本的改善が待ったなしだ。

 介護分野は他産業より賃金が低いとされ、22年は仕事に就く人より離れる人が多い「離職超過」に陥った。厚労省は24年度2・5%、25年度2・0%のベースアップを目指すが、物価が高騰する中、格差は残る。

 報酬改定には、センサーによる見守り機器や介護ロボットを導入した事業者への加算を盛り込み、職員の配置基準の緩和も認めた。生じた余裕は一層の賃上げに反映させるよう促し、業界の基盤強化を図るべきだ。