自民党派閥裏金事件を受けた政治資金規正法改正を巡り、自民が3度修正した改正案が可決され、衆院を通過した。今国会での成立が確実となったが、事件の温床となった政治資金パーティーは残され、政策活動費の透明化も中途半端だ。これでは政治不信の払拭にはつながるまい。

 自民は参院で単独過半数を持たない。岸田文雄首相は公約していた今国会での規正法改正を実現するため、公明党、日本維新の会と党首会談を開いて両党の要求を一部受け入れ、合意を取り付けた。

 公明との隔たりが特に大きかった政治資金パーティー券購入者の公開基準額では、自民は「10万円超」に固執していたが、最終的に公明が求めた「5万円超」をのんだ。ただし公開基準額の引き下げは2027年1月からで、現行の「20万円超」が2年半も維持されるのは問題の先送りに過ぎない。

 政治資金パーティーは開催頻度を増やして1回当たりの購入金額を抑えれば、匿名のまま従来の額を集めることができる。「抜け穴」の解消には程遠い。維新は立憲民主党などとともに企業・団体献金の禁止を求めていたのではないか。

 政党から政治家個人に支出され、使途公開の義務がない政策活動費の見直し策も生煮えぶりが浮き彫りになった。

 当初の自民の改正案では年間の支出上限額を定め、10年後に領収書などを公開するとした。だが公開対象を「50万円超」の支出に限るとしたことに維新が反発、全支出を対象とするよう修正した。

 なぜ公開が10年後なのか。政治資金収支報告書の虚偽記載などの公訴時効は5年だ。10年もたてば、政党の離合集散や会計責任者の交代もあり得る。10年後の公開は監視や責任追及を逃れる狙いとみられても仕方がない。しかも支出上限額など公開のルールは法成立後の検討事項だ。

 政策活動費を監査する第三者機関の設置についても「必要な措置を講じる」と付則に記すのみで、実効性の確保には疑問が残る。

 付則には法施行3年後の見直し規定も入った。ただ規正法は30年前にも改正され、政党への企業・団体献金の5年後の見直しが明記されたが、今も手つかずのままだ。今回も骨抜きにされる懸念が拭えない。

 批判を浴びると微修正を繰り返す自民の対応は「政治とカネ」の問題を根絶しようとする意識に欠ける。改正案に賛成した公明や維新は、改革を履行させる重い責任がある。

 国民が求めるのは、政治資金の徹底的な透明化だ。積み残された課題は多い。各党は国会の会期を延長してでも審議を尽くすべきだ。