ウクライナとパレスチナ自治区ガザでの戦火が長引く中、先進7カ国首脳会議(G7サミット)がイタリアで開催され、首脳声明に二つの紛争への対応策が盛り込まれた。

 焦点となったウクライナ支援では、制裁措置として凍結したロシア資産の活用策を決めた。基金を創設して500億ドル(7兆8千億円強)をウクライナに融資し、復興や軍備の強化に充てる。同国の返済義務は免除する。持続的な支援の枠組みへ道筋を付けたことは評価できる。

 欧米ではウクライナへの「支援疲れ」のムードが広がり、今月の欧州議会選では支援に消極的な右派勢力が躍進し、フランスやドイツでは首脳の支持基盤が揺らいでいる。11月の米大統領選でもウクライナ支援が重要なテーマとなりそうだ。

 ロシアは今回の決定に反発し、報復を示唆している。しかし、力による現状変更に立ち向かわなければ、国際秩序は大きく揺らぐ。今後も各国が結束を強める必要がある。

 一方、G7は犠牲者が増え続けるガザの人道危機に対しては、米国の提起した停戦案への支持表明にとどめた。停戦と人質解放、イスラエル軍撤退などを3段階で進める内容だ。実現を目指すべきだが、恒久和平につながるかは見通せない。

 イスラエルの軍事力は、米国やドイツなどのG7メンバーに支えられている。多くの民間人の殺傷に手を貸しながら、停戦を呼びかける態度は「欺瞞(ぎまん)」と取られかねない。特にグローバルサウスと呼ばれる新興・途上国は冷徹な目で見ている。

 ガザでの戦闘は、イスラム組織ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃がきっかけだが、同国の反撃は自衛権の範囲を逸脱している。求められるのは、紛争を解決に導く外交努力だ。影響力の低下も指摘されるG7が一致して強い態度を示し、人道危機を回避せねばならない。真の和平実現にはパレスチナ自治区への違法入植などの問題解決を図り、2国共存の道を探る取り組みも不可欠だ。

 声明は、中国による電気自動車などの過剰生産や海洋進出への対応も打ち出した。中国はロシアの武器製造を支援し、事実上ウクライナ侵攻に加担しているとの不信感がある。

 ウクライナ問題でロシアを非難する一方、イスラエルの人道軽視には手ぬるい米国などの対応が「二重基準」と批判されている。G7は公正な姿勢で臨み、信頼回復に努める必要がある。

 日本はイスラム諸国ともイスラエルとも友好関係を築き、他のG7とは立ち位置が異なる。独自の強みを生かし、欧米と距離を置くグローバルサウスと連携しながら、紛争終結へ積極的な役割を果たすべきだ。