公立中学校の部活動を民間などに委ねる「地域移行」を進める国の方針を受け、各自治体で取り組みが具体化している。
少子化や教員の負担増に対応するための改革だが、指導者の確保や保護者の費用負担増など課題は山積している。中学生の健全な成長に向けて部活動が継続できるよう、国や自治体は地域や保護者の十分な理解と協力を得なければならない。
神戸市では、各校の教員が顧問となる現行の方式を2026年8月末で終了し、9月から「コベカツ」の愛称で民間移行する。平日、休日を問わず完全移行に踏み切る先駆的な例として、全国から注目されている。
市教委によると、市内の生徒数は約3万3千人、部活動数は男女計約1100に及ぶ。これだけの生徒の活動を支えるには相当な人材が必要となる。
運営を担う団体の第1弾として526団体が登録されたが、競技や活動場所に偏りが生じるなど課題が浮き彫りになった。ソフトテニスは北区の6団体に対し兵庫区はゼロ、卓球やバドミントンも市内3区で登録がなかった。文化部系では、定番の吹奏楽が北区でゼロだった。
受け皿となる団体がなければ、生徒が希望する活動が地元でできないこともあり得る。近隣との連携など、持続可能な形を柔軟に探ってもらいたい。
保護者負担とされる活動費も気がかりだ。申請団体が示した会費は月額3千~5千円が中心で、現行の部活に比べて家庭の出費は増える。家庭環境や経済事情によって活動を諦める生徒が出ないよう、国は自治体への財政支援などを通じて家計負担の軽減を図るべきだ。
神戸市教委が昨年、小学4~6年生約3万6千人を対象に部活の目的などを尋ねたアンケートでは、「仲間と楽しく活動する」の回答が最多の約4割を占めた。中学校の部活には豊かな人間関係の構築や個性の伸長、健康づくりといった意義も大きい。地域に活動の場が移っても、その大切さは失われない。
全国大会などを目指す競技志向の生徒への配慮も忘れてはならない。同時に、行き過ぎた指導や練習、体罰などが起きないよう活動の安全と質を担保する責任が国や自治体にはある。