高校野球を大きく変えるかもしれない議論が進んでいる。
日本高校野球連盟は、イニング数を現行の9回から短縮させる「7回制」の導入を検討している。近年深刻な酷暑や健康管理などの課題に対応するためだが、ルールに関わる改革案だけに賛否が割れる。選手の命と健康を守ることを最優先に、丁寧な議論を重ねてもらいたい。
7回制導入の最大のメリットは試合時間の短縮にある。投球数は約30球、試合時間は約30分短くなるとされ、投げすぎによる投手の肩や肘の故障を防ぐなどの効果が期待される。炎天下となる時間帯を避けて試合を組みやすくなり、観客を含めた暑さ対策にもなる。健康や負担軽減の観点から、導入の方向は歓迎すべきだろう。
既に海外では採用されている。世界野球ソフトボール連盟(WBSC)は18歳以下の国際大会で導入し、高校生年代の世界一を決めるU18ワールドカップは2022年大会以降、7回で勝敗を決する。国内でも小中学生は硬式、軟式を含めて大半が7回制で実施されている。
一方で、試合展開への影響が予想され「野球が変わりかねない」との慎重論も少なくない。野球は筋書きのないドラマとも言われ、甲子園大会でも終盤の八、九回に逆転劇が生まれるなど観客を魅了してきた。選手の出場機会の減少や体力低下を招く可能性を懸念する声もある。
高校野球では近年、試合の早期決着を図るタイブレーク制の導入や1週間500球の投球制限、試合中に選手らが水分を補給するクーリングタイムなどの改革が進められてきた。
賛否両論がある中、日本高野連は7回制について加盟校や一般向けのアンケートを実施し、議論の参考にする。今秋の国民スポーツ大会で試験導入して効果と課題を検証し、年内に対応策をまとめるという。
「熱中症警戒アラート」の発表が相次ぐ中、7回制の導入も根本的な対策とは言えない。球児の憧れの舞台である甲子園での開催意義は大きいが、空調の効いたドーム球場との併用なども検討すべきではないか。
日本高野連は環境や時代の変化を踏まえ、より多くの納得が得られる方策を探ってほしい。