参院選の前哨戦となる東京都議選は、自民党が歴史的大敗を喫し第1会派から転落した。政治資金パーティーを巡る裏金事件に加え、物価高対策など石破茂首相の政権運営に対する不満が示された形だ。有権者の審判を重く受け止めねばならない。
首相は選挙結果を「非常に厳しい審判をいただいた」と述べたが、うわべだけの言葉では信を得られないと肝に銘じるべきだ。これまでも都議選の結果が、その後の国政選挙に影響を与えてきた。衆院で少数与党の自民、公明両党にとって今後の政権運営を左右しかねない。
127議席に対し、過去最多の295人が立候補した。小池百合子都知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」が手堅く支持を集め、第1党の座を奪還した。
今回の争点の一つが、「政治とカネ」の問題だった。
都議会自民党の政治資金パーティーを巡り、収入の一部を政治資金収支報告書に記載せずに自身の収入とする裏金問題が発覚した。派閥裏金事件と同様の不透明な資金の流れが批判を浴び、26人が報告書を訂正した。ただ、裏金づくりが始まった経緯や使途などは不明なままだ。
自民は会派の幹事長経験者6人を非公認とする一方、「裏金候補」を含め42人を擁立した。だが過去最低だった2017年の23議席を下回る惨敗となった。党都連幹部が非公認候補を応援した例もみられ、信頼回復への本気度が疑われる対応があった。自民は真摯(しんし)に反省し、疑念払拭へ説明責任を果たす必要がある。
物価高対策への関心も高かった。各党が訴えた公約は賃上げ促進や家賃補助、都民税減税などで違いが見えにくかった。自民は、備蓄米を安価で入手できるとアピールし、首相が都議選告示日に国民への現金給付を参院選公約に盛り込むよう指示したが、支持は広がらなかった。
都政に批判的な立憲民主党は前回より議席を増やし、共産党は伸び悩んだ。裏金問題を受け自民候補の推薦を見送った公明は、9回連続の全員当選を逃した。一方で国民民主党、参政党は初めて議席を得た。
新興勢力の台頭は既存政党への不満に加え、ネットを駆使した選挙戦が浸透した結果と言える。ただ、中には排外主義と受け取れる訴えもあり、外国人差別などを助長しないか懸念を抱く。
東京の有権者は無党派層が多く、国政の動きを重視して投票する傾向が強いとされる。その動向は参院選でも焦点となるだろう。暮らしの不安に直面する国民の声に、どう応えるのか。与野党ともに有権者に選択肢を示す具体的な政策論争を展開しなければならない。