参院選がきのう公示され、20日の投開票日に向けて17日間の論戦が始まった。
今回は定数248のうち改選となる124議席に加え、東京選挙区の非改選の欠員1を補う計125議席で争われ、522人が立候補を届け出た。兵庫選挙区には改選3議席に対し、前回選と同じ過去最多となる13人が立候補した。
与党の自民と公明で、全体の過半数維持に必要な50議席以上を獲得できるかが焦点だ。衆院で与党が過半数を割り込む中、参院でも同様の状況になれば、石破茂首相の退陣や政権の枠組み変更もあり得る。今後の国政を左右する分水嶺(れい)となる。政党と候補者は具体的な政策と実現の道筋を明確に示し、有権者の選択に資する論戦を展開してもらいたい。
最大の争点となる物価高対策では与野党で主張が分かれている。
負担軽減策として与党は現金給付を公約の柱とし、野党各党は消費税の減税・廃止を掲げる。原材料費の高騰や円安進行から食料品など幅広い分野で値上げが続いており、足元の生活支援は待ったなしだ。ただ日本の財政赤字は先進国で最悪の水準にある。次世代にツケを回す「ばらまき合戦」に歯止めをかけ、財政の膨張を抑えるべきだ。実効性や財源をきちんと説明できなければ責任ある政策とは言えない。
急速な人口減少を踏まえ、社会保障の安定財源の確保もこれ以上先送りできない。年金制度改革法は成立をみたものの、目先の「安心」をいくら訴えても、国民の不安は募るばかりだ。課題への処方箋を示す責任は与野党双方にある。将来の給付と負担の在り方を巡る踏み込んだ議論が欠かせない。
子育てや教育、地方創生、防災、エネルギー、農業も争点になる。30年来の懸案である政治改革や選択的夫婦別姓制度への姿勢も見過ごせない。国際情勢が混迷を深める中、外交・安全保障も問われる。有権者はどの党の主張が自身の考えに近いかを吟味し、1票を投じよう。
任期6年で解散がない参院は「良識の府」とも呼ばれる。多様な民意を反映し、中長期的な視点で議論を深められる点に衆院との二院制の意義がある。選挙戦でも腰を据えた政策論争を繰り広げてもらいたい。
近年、国政選挙の投票率は低迷している。今回は現行憲法下で初めて3連休の中日が投開票日となり、投票率のさらなる低下が懸念される。
普通選挙法制定から今年は100年の節目だ。政治への無関心は「白紙委任」につながる。社会運動を重ね法制定を勝ち取った先人の苦難をしのびつつ、論戦に目を凝らし主権者として責任ある選択をしたい。