日本が主導してアフリカの開発や支援を話し合うアフリカ開発会議(TICAD)が横浜市で開かれ、鉱物資源の安定供給の強化や「法の支配」の重要性、「アフリカ大陸自由貿易圏」の促進などを盛り込んだ横浜宣言を採択して閉幕した。
石破茂首相は、インドや中東とともにアフリカの発展を後押しする「インド洋・アフリカ経済圏イニシアチブ」も提唱した。
アフリカの実質GDP(域内総生産)成長率は2025年、26年とも4%台が見込まれる。豊富な資源や伸び続ける人口に加えIT分野の発展も著しく、アジアに次ぐ成長地域として注目を集めている。
一方で食料不足や劣悪な労働環境、低水準の公衆衛生など、巨大な大陸は人道上の課題も抱える。内戦や紛争も絶えない。商機を見いだせても、進出に二の足を踏む日本企業は少なくない。日本政府は生活水準の向上や人材育成などの支援にも力を入れるべきだ。
1993年に始まったTICADは9回目を数える。アフリカは植民地支配の歴史から欧州各国との関係が深く、冷戦下では東側と西側の勢力争いの場となっていた。冷戦終結で各国の関心が薄れ、日本が旗を振ったのがTICADの始まりだ。
当初は無償資金協力や円借款が議論の中心だったが、その後は「投資」の比重が高まっている。支援をする側とされる側から共存共栄の模索へと、日本とアフリカの関係が進化している証しである。
ただ日本の政府開発援助(ODA)はピークだった97年度から半減し、今回はTICADで恒例だった具体的な支援額の提示も見送った。背景には財政難や、国内経済の長期低迷がある。金額の多寡より、ニーズを踏まえた支援や投資で存在感を高めることが重要になる。
アフリカを取り巻く環境は厳しさを増す。途上国支援の中心だった米国が、自国第一を掲げるトランプ政権の発足でその役割を降りた。
米政府は対外援助を担う省庁を廃止し、アフリカ各国に高関税を課した。国連合同エイズ計画への資金拠出も停止したため、エイズによる死者の増加や感染拡大が懸念される。
近年は、中国やロシアも支援に力を入れる。資金力や軍事力にものを言わせてアフリカ大陸に強権国家の影響力が強まれば、国際社会の不安定さは高まるばかりだ。中国の過剰融資には相手国を債務危機に陥らせる「債務のわな」の問題もある。
混迷を深める国際情勢の渦に巻き込まれず自立できるよう、経済や社会の基盤を築く。アフリカの未来を切り開くため、日本が蓄積した途上国支援のノウハウを生かしたい。