プロ野球の阪神タイガースが、2年ぶり7度目のセ・リーグ制覇を果たした。地元兵庫の甲子園球場で藤川球児監督が選手らに胴上げされ、宙を舞った。9月7日での優勝決定は2リーグ制後の史上最速だ。球団創設90年の節目にチーム一丸となってつかんだ優勝をともに祝いたい。
今季の阪神は、春先から安定した戦いを進め、5月中旬に首位に躍り出ると、その後は一度も譲らなかった。交流戦は8勝10敗と苦しんだものの、リーグ戦再開後に11連勝を記録するなど快進撃を続けた。7月30日にはマジック「39」が点灯、2位以下を寄せつけないまま、圧倒的な大差をつけて頂点に立った。堂々たるゴールといってよい。
岡田彰布前監督の後を受け、初めて指揮を執る藤川監督が優勝へどう導いたのか。監督は開幕前から「凡事徹底」「姿勢」の言葉を繰り返し、選手に自覚を促した。体調管理を徹底し、プレーも奇をてらわず、基本に立ち返ってチーム力を高めていく。他球団に比べ、主力選手にほとんど故障者がなく、1年を通して実力を発揮できたことが最大の勝因といえるのではないか。
監督の選手起用も見事だった。目立ったのが、高寺望夢(のぞむ)、豊田寛、中川勇斗(はやと)の3選手ら昨年までほとんど試合に出ていなかったメンバーを積極的に起用したことだ。単に若手を使うというよりも、長いシーズンを見据え、埋もれていた戦力を発掘したのが目を引く。士気を高めた彼らがベンチの期待に応え、ベテランや中堅と切磋琢磨(せっさたくま)を続けることで、チームに活気をもたらした。
そうした手法も、不動のレギュラーがいたからこそ可能だった。近本光司選手、中野拓夢選手の1、2番が好機をつくり、主砲の佐藤輝明選手が本塁打を量産、森下翔太選手や大山悠輔選手も適時打を重ねた。
投手力も群を抜いていた。右のエース、才木浩人投手と村上頌樹(しょうき)投手が2桁勝利を挙げ、中継ぎの石井大智投手は連続無失点試合のプロ野球記録を更新するなど、12球団屈指の防御率を誇る投手陣が相手打線を封じ「守り勝つ野球」を支えた。
今季は開幕戦の先発9人が全て生え抜きの選手だった。球団のドラフト戦略や育成力が実を結び、チームは黄金期を迎えている。正捕手の座をつかんだ坂本誠志郎捕手(養父市)や、才木投手(神戸市)、村上投手(南あわじ市)、近本選手(淡路市)、佐藤選手(西宮市)ら兵庫出身者が主力に連なるのも誇らしい。観客動員数が12球団トップクラスの熱烈なファンの存在も強みだ。
クライマックスシリーズ突破と日本一へ。さらなる喜びに向け、監督の采配と選手の躍動に期待したい。