神戸新聞NEXT

 国土交通省が発表した7月1日時点の基準地価は、住宅地、商業地、全用途の全国平均が4年連続で上昇した。バブル崩壊で地価が下落に転じた1992年以降、最大の値上がりである。

 要因の一つは、バブル期にも指摘された投資需要だ。円安で海外の資金が不動産に流れ込み、都市部を中心に地価を押し上げた。東京都内では転売目的でマンション価格が高騰し、新築の平均価格が1億円を超える。中古物件や家賃も値上がりし、住宅探しが難しくなっている。

 長く続いたデフレから日本経済が脱却した証しとの見方もあるが、暮らしへの悪影響が及ぶようなら健全な姿とは言い難い。政府、日銀は状況を注視しなければならない。

 基準地価の前年からの上昇率は全国平均で住宅地1%、商業地2・8%と小幅だった。しかし、東京、大阪、名古屋の三大都市圏でみれば、それぞれ3・2%と7・2%に跳ね上がる。

 兵庫県の平均は住宅地1・5%、商業地3・4%といずれも全国平均を上回る伸びとなった。中でも目を引くのは、淡路島全域の平均が34年ぶりにプラスに転じた点だ。

 ただ数字をつぶさに見ると、島全体が活性化したとは考えにくい。

 島内では近年、淡路市を中心に集客施設の開業や企業の本社機能の移転が相次ぎ、島外からの来訪者も増加している。同市の商業地では、2桁の上昇率となる地点もあった。

 一方、洲本市と南あわじ市では住宅地、商業地ともに下落が目立ち、県内のワースト3に名を連ねる地点もあった。集客施設や企業の誘致は地域再生の柱として期待が大きいが、効果を広域に及ぼすのは容易ではないことを示している。

 県内では川西、伊丹など4市1町を含む阪神北地域で住宅地が5年連続で上昇した。うち三田市は18年ぶりのプラスとなった。川西、三田では中心部だけでなく、郊外のニュータウンでも値上がり地点が多い。

 市街地の不動産相場が上昇したため、生活環境の良さも相まってニュータウンが注目を集めているようだ。新たな人の動きが生まれ、活気づくことを期待したい。

 基準地価には地域間の開きも目立つ。四国全県や青森、岩手など14県では住宅地、商業地ともマイナスとなった。兵庫県内でも日本海側や山間部では住宅地の下落傾向が続く。

 2014年に政府が地方創生への取り組みを始めて10年がたっても、東京一極集中や過疎化の傾向は強まるばかりだ。人口が減少する中、ヒトやカネの流れが偏ったままで国力を維持できるのか、社会全体で考える必要がある。