任期満了に伴う神戸市長選がきのう、告示された。人口減少に向き合い、持続可能な都市へどのような戦略を描くのか。市政を検証し、街の将来を見据えた政策本位の論戦を交わしてもらいたい。
今回は、4選を目指す現職の久元喜造(きぞう)氏(71)と、元神戸市議の五島大亮(だいすけ)氏(48)▽兵庫労連事務局長の岡崎史典(ふみのり)氏(56)▽ニュース分析会社社長の木島洋嗣(ひろつぐ)氏(50)-の新人3人が立候補した。
最大の争点は、3期12年の久元市政への評価である。
30年前の阪神・淡路大震災からの復興が一段落し、三宮を核とする都心や臨海部のウオーターフロントの再整備、神戸空港国際化などの大型事業を加速させつつ、子育て・教育支援や次世代への投資にも力を入れてきた。
人口減のスピードを抑え、都市の活力をいかに維持するかは切実な課題だ。神戸市の人口は2011年の154万人をピークに減少を続ける。市の推計では、現在の149万人が50年には119万人にまで減る。出生数が死亡数を下回る「自然減」の拡大が主な要因だが、進学や就職などを機に東京などに移る若年層の転出が多い。若者に選ばれる地域への具体策が求められる。
神戸市は郊外を含む整備計画の中で、JR三ノ宮駅周辺の中心部は商業施設や企業を集積させ、タワーマンションは事実上新築できないように規制した。多くの自治体で、タワマンは建築に伴う経済効果や住民増につながる「起爆剤」として期待される。一方、投資目的で所有する非居住者の増加や、災害時のリスクなど懸念材料も指摘されている。
都心再整備の在り方やタワマン規制などを巡って、4人の候補者の主張は分かれる。多くの住民が暮らす郊外や周辺部への目配りも欠かせない。選挙戦を数十年先の都市の姿を考える好機と捉えるべきだ。各候補の政策の違いに注目する有権者は多いだろう。
物価高への対応、少子化を踏まえた中学校の部活動の地域移行、インバウンド(訪日客)需要を取り込む観光振興、公共交通を利用しにくい「交通空白地」の解消、南海トラフ地震の防災・減災対策など、重要課題は山積している。いずれも暮らしへの影響は大きく、候補者は市民目線で議論を深めてほしい。
気になるのが投票率である。前々回と前回は衆院選と同日選となり、相乗効果がみられたが、今回は単独選で低下が懸念される。
市政の針路は、多くの市民の意思で選び取るものだ。26日の投票日には、神戸の未来を見つめた1票を投じたい。