自民党と日本維新の会の連立与党は、衆院の議員定数削減法案を今国会で成立させる方針を掲げた。
民主主義の根幹となる選挙制度を左右する問題だ。高市早苗首相は今月4日の代表質問で「できるだけ幅広い賛同を得ることが重要」と述べた。削減ありきではなく、与野党で慎重に議論する必要がある。
維新は連立政権入りの「絶対条件」として自民に強く要求し、合意書に盛り込まれた。「身を切る改革」を掲げる維新は地盤の大阪府議会で定数を109から79に減らしており、国政でも実現させて有権者へのアピールをもくろんでいるのだろう。
合意書は削減数などを示していないが、両党は465議席のうち1割削減を目標としており、比例代表(176議席)を50程度減らす案が有力視されている。
定数1の小選挙区制は死票が多くなる欠点がある。比例代表は得票数に応じて中小政党にも議席が配分されるため、小選挙区ではすくい切れない多様な民意を反映させられる。削減を比例代表に絞るのは小選挙区の議席が多い自維に有利とみられ、少数意見の切り捨てに等しい。
なぜ削減が必要か、なぜ1割減なのかを両党は曖昧にしたままだ。首相は参院予算委員会で1割減を「納得感を得られる規模ではないか」との見解を示したが、国際比較でも日本の国会議員数は人口比で多すぎると言えない。臨時国会の会期末まで1カ月を切る中、与党の党利党略による拙速な議論は避けるべきだ。
衆院ではすでに選挙制度の在り方を議論する与野党協議会が設置されている。定数削減について、選挙制度改革とセットで議論すべきと野党が主張したのは理解できる。
小選挙区比例代表並立制による衆院選が実施されてから来年で30年になる。小選挙区で落選しても比例代表で復活当選できる仕組みに、違和感を抱く有権者は少なくない。1票の格差是正による選挙区の見直しが進んだ結果、大都市圏に議員が偏在する傾向も強まっている。
人口減少が加速する中で民意を適切に反映させるため、選挙制度はどうあるべきか。中選挙区制の導入を含め、抜本改革に向けた議論を丁寧に積み上げてもらいたい。
維新は当初、自民の派閥裏金事件の背景にある企業・団体献金の禁止を主張していた。連立協議で自民が受け入れを拒んだために結論を先送りし、代わりに議員定数削減を打ち出した経緯がある。
法案が提出できなければ連立政権からの離脱を辞さない構えを示して自民を揺さぶる。しかしその強気な姿勢は、「政治とカネ」を巡る問題の解決にこそ向けねばならない。
























