偶発的な衝突にもつながりかねない極めて危険な挑発行為だ。断じて容認できない。
防衛省によると、沖縄本島南東の公海上空で6日、中国海軍の空母から発艦した戦闘機が航空自衛隊の戦闘機に2回にわたりレーダーを照射した。レーダーはミサイル発射の準備段階となる火器管制や周辺捜索に使う。断続的な照射は攻撃対象に狙いを定めたと捉えられる。
日本政府は中国政府に強く抗議し、再発防止を申し入れた。当然の対応である。中国側は「自衛隊機が訓練区域に入り中国軍機に接近した」と主張するが、日本側は否定している。中国側はレーダー照射の有無に直接言及せず、訓練を通知したとする音声を公開したが、小泉進次郎防衛相は「十分な情報はなかった」と述べた。両政府は当時のデータを検証し事実を明らかにすべきだ。
不測の事態回避や相互の信頼醸成を目的に、日中の防衛当局間には2023年にホットライン(通信回線)が開設されたが、今回は機能しなかったとみられる。中国は日本周辺で軍事演習を繰り返しており、意図せぬ衝突の防止へ実効性のあるものに再構築することが欠かせない。
高市早苗首相が国会で「台湾有事は存立危機事態になり得る」と答弁して1カ月が過ぎた。「日本は台湾問題に介入しようとしている」との口実を中国に与えた点で、慎重さを欠いた発言だったと言える。中国政府は日本への渡航自粛を呼びかけ、日本産水産物の輸入手続きを停止するなど、対抗措置をエスカレートさせている。軍事面にまで及んだことは深刻に受け止めねばならない。
習近平国家主席はトランプ米大統領と電話会談し、マクロン仏大統領も国賓として招くなど外交の場でも対日批判を重ねる。中国は高市首相の答弁撤回を求めて国連事務総長にも書簡を提出しており、国際社会を味方につける狙いがうかがえる。
しかし今回のレーダー照射で、中国支持の声を上げる国は見当たらない。台湾を巡って力による現状変更がまかり通れば、東アジア地域の安定は根底から揺るがされる。そのことを中国は自覚し、行動を抑制するべきである。日本は米国などと連携し、台湾問題の平和的解決を強く求めていることを国際社会に訴え続ける必要がある。
10月末の日中首脳会談で両国は戦略的互恵関係を強化することの重要性を確認した。日本は中国側の挑発に乗らず毅然(きぜん)と対応する一方で、あらゆるパイプを通じて中国との意思疎通を図らねばならない。今回の事案について、事実関係や主張の根拠を国際社会に冷静に発信することも重要となる。
























