兵庫県内に本社を置く上場企業63社の2025年9月中間決算は、52%に当たる33社が前年同期より最終利益を伸ばした。うち3社は黒字転換した。増益企業が占める割合は1年前より8ポイント近く上昇した。
全体を押し上げたのは、生成人工知能(AI)向け半導体関連である。大阪・関西万博で行楽需要が高まり、バスや鉄道も好調だった。川崎重工業は防衛省向けの航空機製品などが寄与して売上高が過去最高を更新した。
通年の見通しもおおむね堅調だ。39社が26年3月期で純利益の増加や黒字化を見込む。一時はトランプ米政権による高関税政策への警戒感が広がったが、当初予想していた影響額を引き下げる企業が相次いだ。決算発表では「ダメージは軽微」と安堵(あんど)する声も聞かれた。
しかし、楽観はできない。経営リスクに備えるとともに、人や設備に積極投資して稼ぐ力に磨きをかける必要がある。
トランプ関税は不安定要素であり続けるだろう。証券会社の集計によると、全国の上場企業1135社の26年3月期の純利益合計は前期比0・9%減と6年ぶりの減益となりそうだ。製造業は8・3%減で、自動車関連の落ち込みが大きい。米政権が課した関税を販売価格に転嫁できず、利益を圧迫するとみる。
自動車産業の裾野は広い。政府は中小企業への影響を注視し、支援する場合には民間の主体性を促す工夫が欠かせない。
ここへ来て、日中関係の緊迫化が懸念材料として急浮上した。台湾有事を巡る高市早苗首相の国会答弁に中国が猛反発し、中国の航空各社が日中間の航空便を減らし、日本関連イベントの延期や中止が相次ぐなど影響が広がる。
中国は自動車や家電など幅広い製品に使われるレアアース(希土類)の採掘と加工で圧倒的なシェアを持つ。それだけに、県内企業からもレアアースの輸出規制を警戒する声が上がるのは無理もない。
高市首相と習近平国家主席は、10月の首脳会談で双方の共通利益を拡大する「戦略的互恵関係」の構築を確認し合った。両国は現実路線で対立を沈静化させ、関係改善に動くべきだ。一方、日本企業は中国による「経済威圧」の可能性を念頭に、取引先の多角化などリスク分散に取り組むことが求められる。
国内では物価上昇に賃上げが追いつかず、直近の統計で実質賃金が10カ月連続でマイナスとなった。政府は賃上げに取り組みやすい環境整備を進める考えを示している。物価上昇を上回る賃上げに向け、上場企業がけん引役となるべきだ。
























