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 大手企業などが下請け先の中小企業に発注する際の買いたたきなどを禁ずる下請法が改正され、1日に「中小受託取引適正化法」(取適法)として施行された。

 2025年の春闘では大手の賃上げ率が平均5%台だったのに対して中小は4%台と出遅れている。下請けとして不利な取引を強いられ、経営体力を奪われる例が多い実態が背景にある。法改正でコスト上昇分を取引価格に転嫁しやすくなれば、経営体力を高めて賃上げの波及や経済の底上げが期待できる。

 所管する公正取引委員会は26年度政府予算案に体制強化のための増員を盛り込んだ。法順守を各企業に強く働きかけるとともに、不当な取引の根絶へ監視を強めてほしい。

 改正では、発注者側が金額や支払期日などを書面などで明示することを新たに義務づけ、手形による代金支払いを禁止した。発注側に不合理な要求を突きつけられても逆らえない上、迅速に代金を受け取れず資金繰りに苦しむ下請け企業の実情が反映されている。

 トラックなどの運輸業者に発注する「特定運送委託」も新たに法の対象となったほか、公取委や中小企業庁に加え、複数の省庁が連携して法律違反に対処する「面的執行」の強化も盛り込んだ。全般的に中小の苦境に配慮した内容と言える。

 ただ法律が変わっても、個々の経営者が現状に甘んじるのでは絵に描いた餅に過ぎない。取引内容を改めて精査し、発注者側に問題があれば公取委などに積極的に通報するべきだ。そのために取引停止などの報復行為を受ければ、発注者の所管官庁に通報することも法改正で可能になった点を強調しておきたい。

 法改正ではもう一つ、見逃せない点がある。法律名が変わったのと同様に、条文から下請けの用語を一掃した。親事業者とされてきた発注側を「委託事業者」に、受注する側を「中小受託事業者」とし、受発注の双方が対等な関係であるとの認識を浸透させる。

 1次下請け、2次下請けなど、大手メーカーではピラミッドのような構造の中小企業群に部材を納入させている例が少なくない。優れた品質の製品を完成させるには、すべての企業に高水準の技能や工程管理が求められる。大手にとって中小は決して「下請け」ではなく、顧客の要求を満たす製品を造り上げるための「パートナー」と言って良い。

 法改正を機に、取引を適正化するにとどまらず、大手が「親企業」意識を改革してパートナーの体質強化にも真剣に取り組み、共存共栄を模索する方向に経営のかじを切ることが何より重要だ。