神戸新聞NEXT

 米国のトランプ政権が、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)から離脱する方針を決めた。トランプ大統領が今月、これを指示する覚書に署名した。条約には、大気中の温室効果ガス濃度を安定化させ、地球温暖化を抑止する目的がある。1992年に採択、94年に発効し、約200の国と地域が参加する。離脱は米国が初めてになるという。

 米国は昨年、第1次トランプ政権時の2020年に続き、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの脱退を表明していた。今月27日に正式離脱する。UNFCCCはこの協定や、毎年開かれている同条約締約国会議(COP)の前提となる重要な条約である。離脱は各国が協調する温暖化対策を根底から否定するもので、到底容認できない。

 COPでは1997年、先進国に排出削減を義務付けた京都議定書が採択された。2015年には、産業革命前と比べた気温上昇を2度未満、できれば1・5度に抑える目標を掲げるパリ協定が採択された。

 協定の採択前、今世紀末の世界の平均気温は産業革命前から約4度上昇すると予測されていた。しかし各国の取り組みにより、現在は上昇幅が2・3~2・5度になったと推定される。目標達成にまだ遠いとはいえ、一定の成果が出ている。温室ガス排出量が中国に次ぐ世界2位の米国が取り組みを怠れば、温暖化対策に深刻な打撃を与えかねない。

 トランプ氏は離脱の理由について「国益に反する」と述べた。石油産業をはじめとする自国経済を優先する行動であり、横暴と言うほかない。ケリー元国務長官が「国際社会での自滅的行為だ。健康や雇用を失い、子ども世代が代償を払うことになる」と指摘するなど米国内でも批判が出ている。再考を求めたい。

 条約から離脱すると、再加盟する場合には議会の承認が必要になるとみられる。政権交代したとしても、与野党伯仲の上院で3分の2の賛成を得るのは困難との見方もあり、復帰には時間がかかる恐れがある。

 米国は気候変動に関する政府間パネル(IPCC)からも離脱する。科学者を中心とした国際組織で、温暖化の予測や影響、対策をまとめた評価報告書を出している。米国も資金や人材を提供してきたが、トランプ氏は国連の気候変動対策を「史上最大の詐欺」と否定する。非科学的な主張にはあきれるばかりだ。

 日本はIPCCに貢献してきており、27年に開催される総会を誘致する方針だ。日本が米国の対応に追従するようなことがあってはならない。気候危機の回避で協力する国際社会の中で、これまで以上に重要な役割を担っていくべきだ。