高市早苗首相はきのう、衆院を解散した。総選挙は27日公示、2月8日投開票の日程で実施される。
2024年10月の前回選から1年3カ月しかたっていない。新年度予算案や施政方針さえ国会で示さないままの冒頭解散は極めて異例だ。
首相は解散の理由について、連立政権の枠組みが自民党と日本維新の会に変わったことや、安全保障関連3文書の改定前倒しなど「国論を二分する政策や改革に挑戦したい」と主張する。だがその内実は高い内閣支持率を背景に、国民生活の安定を置き去りにして権力基盤の強化を狙うものだ。独善的で解散権の乱用との批判は免れない。
野党による新党結成で政権選択選挙の様相が強まるが、各党が公約を練り上げ、有権者が中身を吟味する時間は限られる。国民にも抜き打ちの解散を仕掛けた高市首相の政治姿勢こそ問われなければならない。
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自民、維新の両党は連立合意書に基づき、衆院議員の定数1割削減のほか、武器輸出や非核三原則に関わる安保関連3文書の改定、国家情報局の創設、スパイ防止法制定、外国人への規制強化などを掲げる。憲法や皇室典範の改正にも前のめりだ。保守色の濃い政策が並び、国の在り方を一変させる可能性がある。
首相は「選挙で国民の信任を得ることができたら、政策実現のスピードを加速できる」と述べるが、選挙は政権への白紙委任を求めるものではない。国の基本に関わる重要政策であり、選挙結果にかかわらず、国会で丁寧な議論を重ねるべきだ。
■負担軽減競う無責任
大きな争点となる物価高対策で注視すべきは、消費税の減税だ。主要政党がこぞって公約に掲げ、負担軽減合戦の様相を呈する。
首相は食料品の消費税を2年間ゼロにする公約を掲げると明言した。消費税は社会保障の安定財源である。減税で年5兆円の税収が失われ、財政不安を高める。首相は財源や開始時期などは超党派の「国民会議」で議論すると述べるにとどまる。
自民が国政選挙で消費税減税を公約するのは初めてだ。「責任ある積極財政」を掲げる首相は、持論の消費税減税を封印し「物価高対策として即効性がない」と否定してきた。一転して消費税減税に踏み込むのは主な野党が掲げる減税の公約にかぶせて、争点をつぶす狙いが透ける。
立憲民主党と公明党がつくった新党「中道改革連合」は「今秋から恒久的に食料品の消費税ゼロ」を公約する。だがこちらも、代替財源を安定的に確保できる仕組みを構築できるかは不透明だ。財政健全化の道筋を含め、将来世代に責任を持つ具体策の提示が与野党に求められる。
忘れてはならないのが、自民党派閥裏金事件を受けた政治改革への対応である。
前回衆院選や昨夏の参院選で自民が大敗し少数与党に転落したのは、裏金問題が招いた政治不信を払拭できなかったからにほかならない。
国民の信頼を取り戻してこそ、経済再生などの重要政策を推進できる。にもかかわらず、裏金の全容解明や企業・団体献金の見直しに首相が指導力を発揮することはなかった。代わりに維新が訴える衆院議員定数の削減に注力する姿勢を強調し、先の臨時国会に法案を提出したが、審議されないまま廃案となった。
さらに、前回の衆院選で「みそぎ」は済んだとして、裏金問題に関与した旧安倍派幹部らの公認や比例代表の重複立候補を容認した。重要なのは、本人が裏金の実態を明らかにし、幅広い有権者の納得を得られたかどうかだ。「政治とカネ」の問題に幕引きを図ろうとする自民の姿勢には反省が見られない。
■野党は対抗軸を示せ
「非自民」結集を掲げる中道の発足で選挙構図は一変した。結果次第では与野党逆転や政界再編の可能性もある。ただ国民民主党など他の野党は独自路線を貫く構えで、多党化の流れを変えるのは容易ではない。
中道の綱領や基本政策は、立民が公明の政策をほぼ受け入れた。安保法制を「合憲」とし、原発再稼働も条件付きで認めた。現実路線への傾斜で与党との違いは見えにくくなった。選挙目当ての方針転換とみなされれば、幅広い支持は得られない。政権との対抗軸を明確に打ち出せるか、真価が試される。
社会保障改革やエネルギー政策、選択的夫婦別姓制度、外交・安全保障など論点は多岐にわたる。短い選挙期間で有権者にどこまで説得力のある判断材料を示せるか。各政党の責任はいつにも増して重い。























