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 衆院選がきのう公示され、12日間の論戦が始まった。全国では11党などから計1285人が立候補を届け出た。兵庫県内の12小選挙区には計53人が立候補した。

 高市早苗首相の政権運営を是とするのか、与野党の勢力拮抗(きっこう)によるチェック機能の強化を望むのか。国政の針路を左右する重要な選択となる。消費税減税を含む経済対策、社会保障、外国人政策、安全保障など論点は多岐にわたる。自民党派閥裏金事件を受けた「政治とカネ」の問題への対応も忘れてはならない。

 首相は「自民、日本維新の会の与党で過半数」(233議席)を目標とする。立憲民主党と公明党が結成した新党「中道改革連合」は政界再編を見据え、比較第1党を目指す。

 前回の衆院選以降、民意の多様化を背景に新興政党が伸長し、多党化が進んだ。昨夏の参院選で躍進した国民民主党や参政党が勢いを持続できるかにも注目だ。選挙後の政権の枠組みも問われる。

 ただ、首相による抜き打ち的な解散で超短期決戦となり、有権者が各党の政策を吟味する時間は限られている。与野党の公約も準備不足は否めず、26日の日本記者クラブでの党首討論会はそれを補う論戦が期待されたが、十分とは言い難い。

 首相が掲げる「責任ある積極財政」の是非が焦点となるほか、与野党とも物価高に対応するとして家計の負担軽減策を競い合う。社会保険料の引き下げなど耳当たりのいい公約が並ぶが、代替財源の確保策や実現時期が曖昧なものも多い。しっかりと目を凝らしたい。

 人口減や少子高齢化が急速に進む中、持続可能な社会保障制度の構築は待ったなしだ。医療・介護などの需要は増大する一方、サービスを提供する人手も財源も不足する。受益と負担について、将来世代を見据えた責任ある論争が求められる。

 首相の台湾有事を巡る国会答弁を機に日中関係は急激に悪化した。中国が軍民両用品の対日輸出規制を強めるなど、改善の糸口はつかめていない。トランプ米大統領が戦後の国際秩序を揺るがし、「力による平和」を掲げる中、大局に立った外交・安全保障論議が欠かせない。

 「切り抜き動画」の投稿など、交流サイト(SNS)が選挙に及ぼす影響にも留意する必要がある。偽・誤情報や誹謗(ひぼう)中傷が拡散されやすく、短い選挙日程ではメディアなどによる真偽の検証が追いつかずに分断や対立をあおるリスクもはらむ。

 有権者の判断力も試される。できるだけ複数の媒体から情報を集め、信頼できる政党や候補者を見極めることが重要だ。その上で未来への責任を果たす1票を投じよう。