米国とイスラエルはイランに対する大規模な攻撃に踏み切り、最高指導者ハメネイ師や政府の高官を殺害した。イラン側はイスラエルや米軍基地のある中東諸国などへの報復攻撃を始めた。戦闘がエスカレートすれば中東全域を戦火に巻き込む恐れがある。双方に強く自制を求める。
トランプ米大統領は攻撃理由として核兵器開発の危険性を取り除くことや、ハメネイ師らによる反体制派弾圧を挙げ「邪悪な人物を除去した」と正当化した。だが、いずれも米国に差し迫った危機とは言い難く、国際法違反の批判は免れない。
米国とイスラエルは昨年6月、イランの核関連施設を攻撃した。イランは「平和利用が目的」と反論し核開発の意思を捨てなかったが、開発は主要施設の破壊により停滞していたとの見方が根強い。
核開発を巡っては攻撃の2日前にも米国とイランの協議が行われ、仲介国オマーンは大きな進展があったと述べていた。なぜ一方的に強硬姿勢に転じたかも判然としない。
米国は1月に主権国家のトップを拘束したベネズエラ攻撃の成功体験からハメネイ師の殺害を強行し、さらに国際秩序を踏みにじった。「法の支配」を無効にする振る舞いは許されない。国際社会は強く非難する必要がある。
昨年6月の攻撃後、イランでは経済制裁による生活苦から反体制デモが激化し、政権の弾圧で多くの人命が失われた。トランプ氏は民衆に体制打破を呼びかけている。しかし政権に取って代わる勢力は見当たらず、出口戦略を描かないまま攻撃を断行したとすれば、混乱を助長する結果に終わりかねない。大国の振る舞いとして無責任極まりない。
今回の攻撃では南部の小学校が破壊され、100人を超える子どもが犠牲になった。トランプ氏が主張する「正義の戦争」などあり得ない。
米国は2003年、大量の破壊兵器を隠し持っているとしてイラクのフセイン政権を打倒した。後に兵器隠匿は虚偽と判明したが、攻撃前には曲がりなりにも多くの国の支持を取り付けた。大国が一方的な主張を力で押し通せば、国際社会の混迷は深まるばかりだ。
イランはホルムズ海峡を封鎖する構えを見せる。原油輸送の大動脈が断たれれば価格高騰は避けられず、輸入の9割超を中東に頼る日本の経済は大打撃を受ける。
高市政権は今回の米国などによる攻撃について賛否を明確にせず、イランの核開発のみを批判している。日本は伝統的にイランとも良好な関係を築いてきた。欧州諸国などと緊密に連携し、外交交渉を通じて中東の和平に寄与してもらいたい。

























