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 米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始してきょうで1カ月になる。米トランプ政権は当初、早期終結を目指したが、イラン側の頑強な抵抗で軌道修正を余儀なくされた。交戦終結に向け第三国で高官協議を模索するが、双方が有利な条件を突き付け合い事態打開は見通せない。

 米国は中東の米軍を増派し、重要な石油拠点であるイラン・カーグ島への上陸を検討しているとされる。地上戦が始まれば戦闘の長期化は避けられず、多数の民間人が犠牲になる。イラン側も周辺諸国への攻撃を激化させ、石油輸送の要衝ホルムズ海峡を完全封鎖する構えだ。双方が歩み寄り、一刻も早く停戦を実現させなければならない。

 米国は仲介国パキスタンを介し、1カ月の停戦を含む15項目をイラン側に提示したと報じられた。既存の核能力の解体やミサイル保有数と射程の制限、親イラン武装戦力への支援停止などの見返りに、経済制裁を解除する内容とされる。

 米側は不調に終わった場合は発電所やエネルギー施設を攻撃すると予告し、2度にわたって期限を延長した。しかし、イラン側が全面的に受け入れる可能性は極めて低い。

 トランプ氏は対イラン戦の勝利を宣言し、目的や計画があいまいなまま攻撃を強行したとの批判をかわす狙いとみられる。だが、強硬姿勢は報復の拡大を招きかねない。国際法違反が強く疑われる攻撃に各国が厳しい視線を向ける現実を直視し、戦闘による人的、経済的損失を早急に回避してもらいたい。

 一方、イラン側は「侵略と暗殺」の完全停止や被害の賠償、交戦を再開しないと保証する仕組みなど五つの条件を米側に示し、全ての受諾を求めたと現地メディアが報じた。こちらも戦勝を前提にした内容だが、世界経済を人質に交渉を有利に進めようとする態度は許されない。

 国際社会はイスラエルへも自制を強く求めるべきだ。ネタニヤフ政権は対立するイランの体制転換を狙い、高官や官公庁を狙った空爆を激化させているが、実現は見通せず、指導者の殺害は強硬派の台頭を招くリスクもある。戦闘の長期化を望むような振る舞いは見過ごせない。

 イスラエル軍が親イラン民兵組織ヒズボラを掃討するためレバノンに地上侵攻し、多くの民間人を巻き込む惨状も止めなければならない。

 高市早苗首相はワシントンで開かれたトランプ氏との首脳会談で、ホルムズ海峡の安全確保への「貢献」を求められた。交戦中の艦船派遣は法的に不可能だとの立場をあらためて表明した上で、国際社会と連携して双方への停戦圧力を強め、平和国家としての役割を果たすべきだ。