政府は、武器輸出のルールを定める防衛装備移転三原則と運用指針を改定した。これまで輸出は非戦闘目的に限定されていたが、戦闘機や護衛艦など殺傷能力のある武器を含め全面的に解禁する。戦後日本の安全保障政策の大転換である。
日本は紛争解決の手段として武力を否定する憲法に基づき、武器輸出を事実上禁じてきた。第2次安倍政権下の2014年以降、厳しさを増す安保環境を背景に段階的に緩和されてきたが、輸出できるのは「救難、輸送、警戒、監視、掃海」の5類型に限られていた。今回、その制限も撤廃される。
重大な政策変更にもかかわらず、政府は閣議など内輪の協議だけで改定を決めた。与党も自民党と日本維新の会による実務者協議を3回開いただけである。国会での審議も国民への説明も、極めて不十分だ。
共同通信が3月に実施した世論調査では、武器輸出を「認めるべきではない」が56%で、「認めるべきだ」の36%を上回った。高市早苗首相は「国論を二分する政策に挑む」と言う。まず自らの言葉で国民への説明責任を果たさねばならない。
新ルールは、装備品を殺傷・破壊能力の有無に応じて「武器」と「非武器」に分け、護衛艦やミサイルなどの武器は秘密保護などに関する協定締結国に限って輸出を認める。現時点で17カ国に上る。
紛争中の国への輸出は原則不可としたが、「特段の事情」がある場合は例外的に認める。米軍など同志国からの要請を想定している。
最大の懸念は歯止めの不確かさだ。輸出の可否は、首相や防衛相らで構成する国家安全保障会議(NSC)が判断し、国会には事後に文書で通知する。これでは国会のチェック機能が働かず、時の政権が恣意(しい)的に運用する余地が残る。
紛争国への再輸出を禁じる規定の明文化や、国会の事前審査を義務付ける仕組みをつくる必要がある。
首相ら政権幹部は「平和国家の基本理念を堅持することに全く変わりはない」と強調する。だが、輸出された武器が紛争に使われ、軍拡競争をあおる危険性は否定できない。それは憲法で不戦を誓った日本が「戦争に加担する国」に転じることを意味する。戦後築いてきた国際的な信用が損なわれるのではないか。
政府は武器輸出で同志国との防衛協力を強化するとともに、国内防衛産業の生産基盤増強も狙う。そもそも武器の供給を成長戦略に結び付ける考え方が平和国家にふさわしいのか。政策転換によるリスクを語らず、議論を避ける政権の姿勢こそが民主主義を損ない、平和国家の根幹もむしばむことに気づくべきだ。























