神戸新聞NEXT

 この春、進学や進級したみなさん、疲れがたまっていませんか。「学校が始まるのがゆううつ」と思っている人は、あなただけではないはず。それは新しい環境で頑張ってきた証拠でしょう。

 親にとっても、環境変化は大きな出来事です。お互い、知らず知らずのうちに緊張や心配で疲弊(ひへい)しているかもしれません。

 不登校や自ら命を絶(た)つ小中学生、高校生が増えています。周囲の大人が本人の苦しみに気づかないケースは少なくありません。特に休み明けは普段の様子と変わったところがないか注意し、つらそうなら無理をさせないことも大事です。

 きょうは「こどもの日」。悩みを抱える子どもたちに日々接する方々の話に耳を傾けました。

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 神戸市灘区の「きらきらぼしプレイス」は、地域の子どもや高齢者の「居場所」だ。心理カウンセラーの上田杏子(きょうこ)さんが2023年10月に住宅を間借りして始めた。学校に行きづらい子が少人数で自由に過ごしたり、近隣住民がおしゃべりを楽しんだりしている。

 自身の子どもは中学3年生。小学生のときに学校に行けなくなった。同じように不登校気味の子どもを持つ母親たちの「学校以外に行ける場があれば」という思いに触れ、居場所の開設に踏み切った。親の相談にも応じている。

■指図ではなく会話を

 子どもが登校を渋ると、多くの親は動揺する。なぜ行きたくないのか尋ねても、子どもが言葉で説明するのは難しい。親は将来を案じるあまり、先回りして不登校を「解決」しようとしがちだという。

 「自分が何とかしなければと思い詰めるお母さんは珍しくない。学校に行けない子どものつらさを受け止め、例えば『今どんな気持ち?』と聞いてほしい。不登校のケースに限らず、子どもに指図はしても会話をしていない家庭は案外多い」

 どきっとした親もいるかもしれない。1日にほんの数分でもいい、子どもの目を見ながら何げない会話やちょっとした声かけをしてもらいたい-。上田さんからのアドバイスである。

 大人の自殺は減りつつある半面、子どもの方は深刻化している。厚生労働省によると、25年に自殺した小中高生は計538人に上り、2年連続で最多を更新した。極めて深刻な事態だ。原因と動機は、いじめや学業不振といった学校問題が最も多く、健康問題、家庭問題と続く。しかし、不明のケースも多い。

■「この人なら」探そう

 昨年6月、子どもの自殺対策に社会全体で取り組むと明記した改正自殺対策基本法が成立した。こども家庭庁の「こども向けホームページ」は、電話やチャットで相談できる窓口を紹介している。国は子どもが命を絶った理由を丁寧に調査し、対策に生かす必要がある。

 NPO法人「ゲートキーパー支援センター」(本部・伊丹市)の竹内志津香理事長は、公認心理師でもある。兵庫県内の中学や高校に招かれ、教員や生徒向けに自殺予防の研修を行っている。ゲートキーパーとは悩んでいる人に気づいて話を聞き、必要な支援につなげる人のことで特別な資格ではない。

 研修ではつらさを抱える人の特徴や、声のかけ方などを紹介する。教員には、生徒から深刻な悩みを聞いたら一人で抱え込まずに同僚や保護者、福祉機関などとチームで対応するよう伝えている。

 竹内さんは子どもたちに向けてこう話す。「ちょっとした悩みなら対話型生成人工知能(AI)『チャットGPT』に相談するのもありだと思う。でも、苦しくて心の傷がひりひりするのであれば、『この人なら』と思える先生や身近な大人に相談してほしい。一度話してみてダメだと思ったり、がっかりしたりしても、あきらめないで」

 何か言いたそうな子どもが近くにいないだろうか。そう心に留める大人が地域で一人でも増えればいい。