中国軍が、原子力潜水艦から太平洋に向けてミサイルを発射した。核弾頭の搭載が可能で、米本土を射程に収める最新鋭の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「巨浪3」が使われたとの見方がある。
中国側は訓練の一環と説明した。ミサイルは南シナ海に位置する海南島東側の海域から発射され、南太平洋ツバルの排他的経済水域(EEZ)近くに落下した可能性が高い。事前に日本やオーストラリア、ニュージーランドなどに通知があった。
「国際法や国際的な慣例に合致している」と中国側は正当化するが、到底容認できない。核の脅威で他国を威嚇する行為にほかならず、中国の事前通知に際して、日本が再考を強く求めたのは当然だ。国際社会の緊張を高め、軍拡競争を誘発する軍事行動を非難する。
習近平指導部は、台湾統一を「歴史的任務」と位置付ける。ミサイル発射は、台湾への武器売却を検討する米トランプ政権をけん制するのが狙いとみられる。中国は高市早苗首相の防衛政策を「新型軍国主義」と批判しており、日本への圧力を強める意図もうかがえる。
だが、核戦力の強化にまい進する中国の動きこそが、日本を含む周辺国の懸念を引き起こしているのが現状ではないか。
SLBMは潜水艦から発射されるため、探索が難しい。長期間浮上せずに活動できる原子力潜水艦に搭載すると、他国にとって深刻な脅威となる。中国は2024年9月に大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射訓練を行った。習政権は、これらのミサイルに戦略爆撃機を加えた陸海空の「核の3本柱」で対米抑止力を高めつつある。
大国が力による平和を推し進めようとする中、核の不拡散と軍縮へ向けた国際的な枠組みは危機にひんしている。
米ロ間に唯一残っていた新戦略兵器削減条約(新START)は今年2月に失効した。核拡散防止条約(NPT)の再検討会議は、3回連続で成果をまとめる文書を採択できなかった。英国とフランスも核戦力の増強にかじを切った。
偶発的な衝突のリスクを回避し、核軍縮の枠組みを再建するための外交努力が求められる。日本は唯一の戦争被爆国として多国間交渉をリードし、議論を積み重ねるべきだ。
政府は安全保障関連3文書の年内改定に向け作業を進めている。これに反発する中国が軍事的な挑発行為をエスカレートさせる恐れがある。国民の安全を守る観点から、高市政権は挑発に乗ることなく、冷え込んだ中国との関係修復に粘り強く取り組まねばならない。























