全ての労働者に適用される最低賃金(時給)の2026年度改定額の目安が決まった。全国平均を55円(4・9%)引き上げ、現在の1121円から1176円となる。労使双方の代表者らでつくる国の審議会が議論していた。
これを受け、兵庫労働局の地方審議会は県内の最低賃金を現在より56円(5・0%)引き上げて1172円とするよう答申した。正式に決まれば10月1日から適用される。
全国、兵庫とも高水準の引き上げが示されたが、伸びは鈍化した。25年度は各地で目安を上回る改定が相次ぎ、全国平均66円(6・3%)増と過去最大の上げ幅となった。今回、前年度を下回ったのは経営体力の弱い事業所への配慮からだ。
政府の姿勢の変化も審議会の議論に影響を与えたようだ。25年度の改定は「20年代に全国平均1500円」を目標に据えた石破政権下で行われた。当時、賃金向上担当相だった赤沢亮正氏が厚生労働省幹部らに大幅増を要求するなどの「政治介入」が顕著だった。
一方、高市早苗首相は「金額を示して事業者に丸投げするのは無責任」と述べ、全国平均1500円の達成時期を「遅くとも30年代前半」に先送りした。本年度の改定についても目立った動きは見られなかった。
このため、経済データ重視の決め方に回帰したと評価する声もある。最低賃金は労働者の生計費、賃金、企業の支払い能力の3要素を考慮して決めると定められており、政治との距離をどう取るかは慎重に考える必要があるだろう。
ただ、日本の最低賃金は国際的にも依然見劣りがする。非正規雇用を中心に最低賃金に近い金額で働き、家計を支える人は多く、目安通りに改定されても経済的に安心できる水準には程遠い。物価高騰と人手不足が続く中、消費を支え、経済の好循環の起点となる賃上げの重要性は増している。
雇用形態や地域間の格差を是正する観点からも、データを踏まえた上で生活保障の基盤である最低賃金を持続的に引き上げることが欠かせない。中小零細企業が賃上げしやすいよう、政府は価格転嫁や生産性向上を後押しする支援策に一層力を入れてほしい。医療や介護など地方で担い手不足が深刻なエッセンシャルワーカーの待遇底上げについても、国レベルで議論するべきである。
「日本列島を、強く豊かに」を掲げる高市首相は、労働規制の緩和に意欲を示す。残業をしやすくすれば企業の人手不足が和らぐとの考えからだろう。労働者の健康や安心を軽視すれば「豊かに」は実現しない。働き手への目配りが不可欠だ。























