神戸新聞NEXT

 政府が進める食育の取り組みが、食料品高騰の影響で後退している状況が明らかになった。

 6月に公表された2025年度版の「食育白書」によると、心身の健康確保などのために政府が設けた24の食育目標のうち、9割に当たる22項目が未達だった。このうち半数以上の項目は、19~21年度より達成率が下がった。農林水産省は物価高で節約志向が強まったのが要因の一つと分析している。

 実効ある物価高対策が急がれる。日ごろの食生活を見直したり、身近な産地に関心を持ったりするきっかけとなるよう、農水省は食育の目的や目標を啓発することが重要である。

 白書は、ネットや郵送などの調査により目標の達成度を測った。「産地や生産者を意識して農林水産物・食品を選ぶ国民の割合」は、目標の80%以上に対して現状は66・0%で、20年度より7・5ポイント減った。「環境に配慮した農林水産物・食品を選ぶ国民の割合」の目標は75%以上だが、57・1%にとどまり、20年度比10ポイント減だった。

 見過ごせないのは、「朝食を欠食する子どもの割合」(目標値0%)が19年度の4・6%から6・4%に上昇したことだ。経済的な理由で朝食を食べられない子どもがいないか、学校や保育所は注意を払ってほしい。場合によっては行政の福祉部門との連携が必要となろう。

 一方、「学校の栄養教諭による地場産の食に関する指導の平均取り組み回数」と「郷土料理や伝統料理を月1回以上食べている国民の割合」の2項目は目標を達成した。

 家庭や学校での食生活を改善し、国民の健康増進を目指す「食育基本法」は、05年に議員立法で成立した。「食」という個人的な領域に国家が立ち入るべきではないとの反対意見も根強かった。同法は今年5月に改正され、食料安全保障の確保や、学校での食育強化などが盛り込まれた。

 白書では、30歳代男性の食育への関心の低さが目立った。農水省は、健康的な食事の提供などで従業員の食生活改善に取り組む企業の顕彰を始めた。現役世代の食育を推進するには、長時間労働の是正といった働き方改革の視点が求められる。