尼崎JR脱線事故
乗客106人の命が奪われた尼崎JR脱線事故の発生から25日で17年。JR伊丹駅周辺(兵庫県伊丹市)ではコンサートなどの追悼イベントが開かれ、関係者らが祈りをささげた。負傷者らも亡くなった人に追悼の思いを届けようと、あの日と同じように青く澄んだ空へ風船を飛ばした。(浮田志保)
■鐘は犠牲者の数だけ
追悼行事は、事故が起きた午前9時18分に合わせて催された。JR伊丹駅前にある「フランドルの鐘」の前では、市民らが黙とう。カリヨン(組み鐘)が伊丹市の犠牲者数と同じ18回鳴らされた。
事故の被害者を支援する弁護士らでつくる「思いをつなぐ連絡会」が発案。市が事故翌年の2006年から続け、今年も市職員や負傷者約10人が集まった。
■ピアノ演奏で祈り
午前10時からは、アイホール(伊丹市伊丹2)で追悼コンサートがあり、ピアニストのスミワタルさんの演奏に約20人が聞き入った。
3両目で重傷を負った増田和代さん(52)=伊丹市=の呼び掛けで実現した。「赤いスイートピー」「野に咲く花のように」などを奏でたスミさんは「事故のことを知らない世代が増えている。元気や笑顔を届けて、風化させないようにしたい」と語った。
■空にメッセージ
午前11時50分ごろ、増田さんら8人はJR伊丹駅近くの猪名川沿いで約40個の風船を一斉に空へ放った。
2年前、事故発生から15年の節目に増田さんが知人と企画した。今も脚や腰に痛みが残る中、コンサート会場から川まで歩いてたどり着いた。
色とりどりの風船には「祈り」「事故を忘れないでいつも心の中に!」などとメッセージが記された。
増田さんは母の洋子さんと共に事故で負傷し、支え合ってきた。洋子さんは20年夏、79歳で他界。この日は洋子さんに宛て「こちらの世界は大変ですよ あたたかく見守っていてくださいね」と風船に書いた。
空に消えゆく風船を見詰め、「(運転士を含む)107人の命が犠牲になったことで今がある。安心、安全な社会になれるよう祈り続けたい」と話した。
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