乗客106人と運転士が死亡した尼崎JR脱線事故は25日、発生から17年となった。現場に整備された「祈りの杜」(兵庫県尼崎市久々知3)では、新型コロナウイルス感染拡大で中止されていた追悼慰霊式が3年ぶりに営まれた。遺族らが集まって手を合わせた。(堀内達成)
祈りの杜は2018年、JR西日本が、電車が衝突したマンションや隣接地を買い取り、約7500平方メートルの追悼空間として整備した。マンションは4階部分まで残され、劣化を防ぐためアーチ状の屋根や壁で覆われている。慰霊碑、犠牲者の名碑、事故の概要を刻んだ碑文が並ぶ。
19年には、式典会場を尼崎市内の別の場所から祈りの杜に移して初めて実施したが、20年以降はコロナ禍のため2年連続で中止となっていた。
式典に先立ち、事故が起きた午前9時18分が近づくと、快速列車がスピードを落として祈りの杜の前を通過した。
祈りの杜は周囲がシートで覆われ、一般には非公開とされた。来場できない遺族、負傷者にはオンラインでも配信した。
JR西では、事故後に入社した社員が全体の約6割に増えており、事故の風化防止、教訓の継承が課題となっている。
社員教育などを目的に、事故車両の保存施設を大阪府吹田市の社員研修センター内に24年秋ごろ整備する方針で、22年内にも着工する。一方で、遺族からは「車両は現場で保存すべき」「一般公開して」などの声も上がっている。