「一歩」もそれぞれ(撮影・鈴木雅之)
「一歩」もそれぞれ(撮影・鈴木雅之)

 岸田衿子さんの詩集に『いそがなくてもいいんだよ』という一冊がある。本のタイトルにもなっている言葉は、その中の詩の一つ「南の絵本」に出てくるフレーズだ。「いそがなくたっていいんだよ」ではじまるこの短い詩は、「ゆっくり歩いて行けば 明日には間に合わなくても 来世の村に辿りつくだろう」と謳(うた)い、「いそがなくてもいいんだよ 種をまく人のあるく速度で あるいてゆけばいい」と終わる。読んだ人の心から焦りを取り除く、とても優しい、穏やかな気分になる詩だ。