うれしい話です。本紙5月8日夕刊のトップに、在日コリアンの資料館がこの秋、神戸・長田にオープンするとの記事が大きく載っていました。これを読んで私は、すぐに司馬遼太郎さんの「街道をゆく」の一章を思い出しました。「神戸散歩」です。
司馬さんは、そこで、華僑の陳徳仁さんと神戸華僑歴史博物館(1979年創設)、在日コリアンの韓晳曦(ハンソッキ)さんと青丘文庫(69年創設)のことを書いています。神戸華僑歴史博物館には今も、司馬さんと陳さんを真ん中にこの時の案内役、陳舜臣さんやロシア人モロゾフさんらと談笑している写真が飾ってあります。司馬さんが取材のために神戸を訪れたのは82年ですから、もう40年以上も前の話。陳徳仁さんは貿易、韓さんはケミカルシューズ製造の経済人ですが、全く独力でそれぞれ華僑やコリアンに関する資料や書籍を収集し、公開していたのです。
神戸華僑歴史博物館は、陳さん没後一時閉館を余儀なくされましたが、「日本で唯一の華僑歴史博物館」として、中央区海岸通のKCCビルの一室で今日まで頑張ってきています。神戸中華総商会の事業の一環ですが、日々の運営は華僑華人と日本人のボランティアの協働です。青丘文庫は、司馬さんが訪ねた時は須磨区の韓さんのゴム工場の一郭にありましたが、その後96年に神戸市立中央図書館に寄贈されました。
博物館や図書館などを持続的に運営していくことはなかなか大変ですね。特に、民間の力でやっていくことは経済的にも人材の確保の面でも容易ではありません。この点で、神戸華僑歴史博物館と青丘文庫の歩みは二つの道を示しているといえるでしょう。
ところで、陳舜臣アジア文藝(ぶんげい)館がオープンしたのは2014年。ただ残念なことに現在は閉館のままです。長田のコリアン・ミュージアムのオープンを楽しみにしつつ、将来の発展を併せて祈るものです。(神戸大名誉教授=中国近現代史)























