元飼い主に遺棄された挙句、しばし行く末を翻弄されることにもなったポメラニアンのフィーネ
元飼い主に遺棄された挙句、しばし行く末を翻弄されることにもなったポメラニアンのフィーネ

群馬県内北部の町で、ポメラニアンが路頭に迷い、不自然に徘徊していました。後に群馬県動物愛護センターに収容されました。

センターではこういった明らかな元飼い犬の収容があった場合、地元での畜犬登録の状況を調べ上げます。

その執念によって、ポメラニアンの飼い主とおぼしき人物を探し当てました。しかし、肝心の飼い主は入院中。ワンコたちは「入院によって、お世話ができなくなるから」と意図的に付近に棄てられたのだろうと考えられました。

■飼い主特定も「保護したいのにできない」状況

あまりに身勝手な話です。飼い始めた途中で犬猫を手放すことを推奨するわけではないものの、やむを得ない事情でどうしてもワンコの育児放棄をするのであれば、事前に保護団体や自治体に相談すべきです。

というのも、このポメラニアンのように飼い主が特定され、しかし正式な譲渡手続きが取れない場合、「所有権」の問題が発生し、第三者がその命を救いたくてもできなくなります。

後に、保護団体・Delacroix Dog Ranchがこのポメラニアンを保護することにはなったものの、この「所有権」問題でしばし「保護したいのに、できない」という状況が続きました。

■「引き取る」「引き取らない」と二転三転する元飼い主

団体ではこのポメラニアンの保護を決めた後、お世話をしてくれる預かりボランティアさんの家のキャパを確保してもらっていました。しかし、その経緯の中で、突然飼い主が「やはり引き取る」「やはり引き取らない」と二転三転。

その間、預かりボランティアさんは待ちぼうけ。通常、犬猫の保護活動を行う人たちは、「1匹でも多くの命を救う」として、常にキャパいっぱいの犬猫のお世話を続けている状況です。そんな中で、「保護できるか・できないかわからない」時間が長く続くというのは、団体も預かりボランティアさんもかなりヤキモキします。なぜなら仮に保護できなかったとして「待っている時間に、他の命を救えたかもしれない」とも考えられるからです。

■ついに吉報が届いた!

しかし、飼い主はその後、音信不通に。結局動物愛護センターでの長い収容期間を終え、「フィーネ」という新しい名前をもらい団体に引き取られることになりました。

フィーネは散歩が苦手な様子。おそらくは元飼い主から満足な散歩に連れて行かれていなかったためだと思いますが、預かりボランティアさんの献身的なお世話とトレーニングによって、2週間ほどで足取りがしっかりして来ました。

そして、馴れてくるのと合わせて散歩の気配を察すると尻尾フリフリで「早く連れて行ってくれ」とねだってくるようにもなりました。実際に外に連れ出すと、馴れない景色にビビりながらも楽しくチョコチョコ歩きます。

そんな経緯を経て、後には「迎え入れたい」という里親希望者さんからの申し出がありました。フィーネの保護経緯を事前によく理解してくれた優しい里親希望者さんで、「最後まで愛情をたっぷり注ぎ続けます」と言ってくれ、ここで正式譲渡となりました。

長い間、不安定な時間を過ごして来たフィーネだからこそ、これから先は、全く不安のない環境で、穏やかな時間を過ごしてほしいなと思います。

(まいどなニュース特約・松田 義人)