何かをやってほしい時に必要なのは質問(パパ頭さん提供)
何かをやってほしい時に必要なのは質問(パパ頭さん提供)

どれだけ仕事のキャリアを積んでも、後輩への指示は難しいもの。これが教師と教え子の立場だったら、指示をしてもその通りにやってもらえないという状況は想像しやすいものでしょう。そんな教育現場での悩みについて、パパ頭さんが描いた作品『質問の力』がSNS上で注目を集めています。

とある高校の職員室で「生徒にやって欲しいことがあるときは、質問するんだ」とベテラン教師が語りかけます。それを聞いた後輩教師は首をかしげて「指示した方がよくないですか?」と質問しました。そこでベテラン教師は生徒に質問する理由も語ります。その理由は明快で、「やれと言っても、やらないだろ」の一言です。

例えば、模試でE判定となった生徒の場合、まず「どうだった?」と結果を本人に聞きます。生徒から「やばかった!E判定だった」という声を聞いてから、「あと何点取れていたら、D判定になるの?」と問いかけるのです。

その後も「どうしたらあと30点取れるの?」や「どこかで稼げないの?」など段階的に質問を続けていき、先生の質問に答える形で、生徒自身がどのように今後行動していくべきかの答えを導き出してもらいます。

また、「こちらから『英単語の勉強をしろ』と指示するのはダメなのか?」という後輩の問いに、ベテラン教師は「誰かから指示されたことは『選択させられたこと』になる。でも人は『自ら選択したこと』でなければ、やる気が出ない」と答えます。

生徒たちは自ら考える力を養うことで、少しずつ自信を身につけていきます。そして、自分で立てた目標を守ろうとする力も育まれていくのです。これは高校生だけでなく、幼い子どもにも同じことがいえます。「~しなさい」ではなく「~するには?」と考えさせる質問の力。ちょっとした工夫で、子どもの可能性は大きく広がるのかもしれません。

同作について作者のパパ頭さんに詳しく話を聞きました。

■問題に気づいてもらったり、目標を立ててもらったりすることが大切

-この漫画を描いたきっかけは?

職場では高校生、家では小さな子どもと接していて、年齢に大きな違いはあります。しかし、教育という点で見ると、どちらにも共通して使える方法があるのではないかと思ったことが、この漫画を描くきっかけになりました。

-質問の本来の目的について、どのようにお考えですか?

質問することが、相手を自分の思う通りに導くための方法のように描いてしまったところがありました。でも本来、質問の目的は相手をコントロールすることではなく、相手が持っている力を引き出したり、問題に気づいてもらったり、目標を立ててもらったりすることが大切だと思います。

-質問者が心がけるべきことは?

『この人はどんな答えを期待しているのかな』と相手に考えさせるのではなく、『本当はどんな答えが一番良いのか』を一緒に考えられるような質問をするように、質問する側が工夫することが大切です。

(海川 まこと/漫画収集家)