何十箱もあるのに…どうやって探すっていうの?
何十箱もあるのに…どうやって探すっていうの?

都市部の限られた住まいでは、扇風機などの季節用品やキャンプ道具などのレジャー用品、子どもの作品といった捨てられない「思い出」が収納スペースを圧迫していきます。東京都在住のSさん(40代)夫婦は、ともに個人事業主として働いており、書類や資料の保管は常に悩みの種です。そんな狭いマンション暮らしの中、地方にある義実家を私設倉庫として利用していたことで、思わぬトラブルが発生しました。必要な資料を探すために義母とビデオ通話で段ボールを一つずつ開けることになってしまったのです。

■狭すぎる都会の部屋と、広すぎる田舎の実家

東京都心で個人事業を営むSさん夫婦。主に在宅で仕事を行っているので、部屋には日々の書類が山のように溜まっていきます。

住まいは、3LDKのマンション。一見広そうですが、リビング兼仕事場、寝室、子ども部屋とクローゼットで使えるスペースは限られています。

当然、収納にも限界があります。そこで思いついたのが「夫の実家を倉庫代わりにする」という方法でした。夫の実家は地方にある一軒家で、和室が10部屋以上あります。使われていない部屋も多く、「一部屋くらい物置にしても大丈夫だろう」と軽い気持ちで始めたのがきっかけでした。

■送っては積み上げ、積み上げては忘れる

はじめのうちは、ちゃんとラベルをつけて箱に詰め、宅配便で送っていました。

送った中身は主に古いプレゼン資料や過去の帳簿類、古いパンフレット、季節外の道具類など。頻繁に使うものではないけれど、法廷保存期間などもあり、簡単に処分することはできないものたちです。

夫婦の仕事が軌道に乗るにつれ、送る荷物の頻度は増加。夫は自宅に置けなくなった書類や着なくなった服を箱に詰め、私は書類に加えて子どものおもちゃや作品を送っていました。結果として、夫の実家には段ボールだらけの部屋が1室できあがりました。

■事件は突然に「あの資料が、今すぐ必要」

問題が表面化したのは、2025年のある夏の日の午後。Sさんの仕事で数年前の契約書と関連資料が急に必要になりました。自宅を探してもなく、保管場所は義実家しか思い当たりません。しかし新幹線で2時間の距離、今週は多忙で行けません。

そこで、義実家にいる義母に荷物をあけて調べてもらおうと思いますが、何十箱も送った段ボール箱から探し出すのは至難の業。しかも、「夫婦それぞれが勝手に箱詰めして送っていた」ため、どの箱に何が入っているか、2人とも把握していなかったのです。

そこで思いついたのが、LINEのビデオ通話でのリアルタイム捜索です。

■ビデオ通話での開封の儀

「その段ボール、右上に丸いシール貼ってありますか?それ多分、2021年の資料です」

 「…丸いの、貼ってないわね。これは違うわ」

義母の手元が映るスマホ画面。次々と開けられていく段ボールからは、封筒に入った資料、ノベルティのサンプル、封を切っていない紙の束が現れ、時には子どもが幼稚園のときに作った粘土細工や、折り紙の山、壊れた電車のおもちゃたちまで出てきました。あの時、適当に荷物を入れた過去の自分を恨みました。

夏の暑い中、LINE電話の義母もだんだん不機嫌に。埃まみれの箱を何十分も開け続けた末、ようやく目当ての資料が見つかりました。無事に送ってもらえたものの、最後に言われたのがこの一言でした。

「もう!うちはゴミ箱じゃないからね!」

■遅めの夏休み「帰省=大掃除」の予定

この一件をきっかけに、Sさん夫婦は遅めの夏休みをとって、実家の整理に行くことにしました。「いいかげん整理しに来て」「私たちだって終活の身!」という義母からの言葉もあり、倉庫と化した部屋の大掃除を実施予定です。資料や思い出品の仕分け、今後の保管方法も話し合う考えです。

最近ではサブスク型のトランクルームやクラウド収納サービスも人気で、資料はスキャンして保管し、実物は民間サービスで一時保管する方法も広がっています。

どうしても広い田舎の実家があると、物置代わりにしがちです。しかし、無尽蔵に送りつけられる側も迷惑です。みなさんも“実家倉庫”を一度点検してみてはいかがでしょうか。

(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)