夫婦間の性生活に関する悩み、どう解決?(TAGSTOCK2/stock.adobe.com)
夫婦間の性生活に関する悩み、どう解決?(TAGSTOCK2/stock.adobe.com)

夫の自尊心を気遣うあまり、性生活の不満を言い出せずにいる妻。遠回しに希望を伝えても傷つけてしまい、今ではほぼセックスレス状態に…。看護師、僧侶、スピリチュアルケア師、ケアマネージャー、看護教員の玉置妙憂さんが三大欲求の一つである性欲についての悩みに応えます。

■【相談】性生活に不満があるのに伝えられない

私の悩みは夫との性生活に満足していないのに、本音を伝えられないことです。夫とは性について話し合える雰囲気がありません。彼の自尊心を傷つけないよう気を遣いすぎて、本音を隠し続けています。

夫は完璧主義で穏やかな性格ですが、自信家でプライドが高い面もあります。以前、勇気を出してベッドでの希望を遠回しに伝えたとき、深く傷ついた様子でした。

それ以来、要望を伝えられず、徐々に夫との関係を避けるようになり、今ではほぼセックスレス状態です。問題は、私自身の性欲がなくなったわけではないこと。むしろ、満たされない欲求を自分一人で解消する日々が続いています。

最近ドラマや漫画で婚外恋愛モノをよく見ているせいか、最近では他の男性に目が向いてしまい、自分でも戸惑っています。夫とは避けたいのに他の人には惹かれるという矛盾に心が揺れることに、私自身怯えています。

このまま性生活の不満を抱え続ければ、取り返しのつかない選択をしてしまうのではと不安です。

(30代・女性)

■【玉置さんの回答】 あなたが本当に求めているのは「性」ではないのでは?

ご存知の通り、食欲、性欲、睡眠欲は、人間の三大欲求です。生きていくうえで最低限必要な、本能に根ざした欲求だと言われています。つまり、動物として、極めて自然なことなんですよ。だからまずは、性生活に不満を感じる自分を責めずに、「そう感じてるんだね」と、自分の心に寄り添ってあげてくださいね。

ただ、食欲や睡眠欲は、自分の努力である程度コントロールできます。でも性欲はそうはいかない。相手がいて、はじめて成立するものだから。だからこそ、難しさも切なさも出てくるんです。

相性の良い相手に巡り会えて、心も身体も満たされるようなセックスを楽しめたら最高だけれど、なかなかそううまくはいかない。それは、あなただけじゃありません。ほとんどの人が、同じようなもどかしさを抱えています。だって他人同士なんですから。

じゃあ、そんななかでどうしていくか。そこで必要になってくるのが、「歩み寄り」なんです。自分の欲求も大切にしつつ、相手の欲求にも耳を傾ける。どちらか一方が我慢するんじゃなく、お互いの満足を探して、試行錯誤していく。その原動力になるのが-やっぱり「愛」なんでしょうね。

愛があると、相手が満たされている様子にこちらまで嬉しくなるし、自然と寄り添いたくなる。無理しているわけじゃなく、「そうしてあげたい」と思える。だから、満足のいくセックスが成り立つんです。セックスがうまくいっているカップルというのは、テクニックじゃなくて、たいてい愛が流れてるんですよ。

そう考えると、今のあなたたちの間には、「愛」が…見えなくなってきているのかもしれない。「性生活の不満」は、愛が失われつつあることが、形になって出てきただけかもしれません。そして、本当にあなたが求めているのも、「性」ではなく「愛」なんじゃないですか?

だって、快感だけが目的なら、一人で解消するのが一番確実で、手っ取り早いし、余計な気遣いもいりません。でも、それじゃ満たされないんでしょう? だから、あなたが求めているのは、心と心が触れ合うような、ちゃんと通い合う「愛」なんです。セックスが欲しいんじゃない。愛されたいんです。

「最近では他の男性に目が向いてしまい、自分でも戸惑っています」-戸惑う必要なんて、ありませんよ。そういうこと、誰にだってあります。心が乾いていたら、潤いを求めてしまうのは自然なことです。

「夫とは避けたいのに、他の人には惹かれる」-ええ、それはあなたが、ちゃんと愛されて、大切に扱われたいと思っている証拠です。

優しく抱きしめてくれる人、言葉より先に気持ちを察してくれる人、あなたという存在を丁寧に扱ってくれる人。つまり、あなたの中で、ご主人に対する愛情は、もうだいぶ枯れかけているのでしょうね。

どうですか。その枯れた愛の泉。もう一度、水を引けそうですか?

これは、彼がどうこうという問題ではないんです。あなた自身の問題なんですよ。「もちろん愛しています。でも、セックスが…」って言いたくなる気持ちもわかる。でも、それは頭で考えた理屈。心も身体も、もっと本能的に動いてる。三大欲求って、そういうものです。理屈じゃどうにもならない、根っこから私たちを突き動かすものなんです。

今のあなたの身体と心は、たぶん精一杯の「危険信号」を送ってきているんじゃないでしょうか。

その声を無視せず、もう一度、彼との関係を見つめ直してみてください。未来は、そこから動き出します。

◇  ◇

◆玉置妙憂(たまおき・みょうゆう)
看護師。僧侶。2児の母。専修大学法学部卒業後、法律事務所で働く。長男が重度のアレルギーがあることがわかり、「息子専属の看護師になろう」と決意し、看護学校で学ぶ。看護師、看護教員の免許を取得。夫のがんが再発。夫は、「がんを積極的に治療しない」方針をかため、自宅での介護生活をスタートする。延命治療を望まなかったため、自宅で夫を看取るが、この際にどうしても、科学だけでは解決できない問題があることに気づく。夫の“自然死”という死にざまがあまりに美しかったことから開眼し出家。高野山にて修行をつみ高野山真言宗僧侶となる。その後、現役の看護師としてクリニックに勤めるかたわら、患者本人、家族、医療と介護に携わる方々の橋渡しとして、人の心を穏やかにするべく、スピリチュアルケアの活動を続ける。訪問スピリチュアルケアを通して、患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)とQOD(クオリティ・オブ・デス)の向上に努める。非営利一般社団法人「大慈学苑」をつくり、代表を務める。課題解決型マッチングメディア「リコ活」でコラムを執筆。

◇  ◇

「リコ活」は、夫婦問題の課題解決型メディアです。夫婦関係のトラブルや離婚で悩む人に、専門家とのマッチングの場を提供するとともに、家族のカタチが多様化する時代にあわせた最新情報を発信しています。

(まいどなニュース/リコ活)