面倒だし…いいかな
面倒だし…いいかな

「家事は完璧にすべきもの」という意識が薄れつつあります。暑さがこたえる夏はもちろんのこと、季節を問わず「できればやりたくない」が本音という声も聞かれます。そんな思いに正直に生きる主婦たちが生み出した、ズボラでありながらも理にかなった家事術とはどのようなものでしょうか。

■「一石二鳥」の習慣

▽埼玉県在住Sさん(40代)

主婦歴20年を迎えるSさんは、中高生の子ども2人の母親です。自宅のキッチンではコンロ3口とまな板2枚が常にフル稼働しています。味噌汁を作っていた片手鍋に豆腐を入れた後、「鍋をかき回すのにおたまを使うのが面倒」と感じ、手元にあった包丁でぐるぐるとかき混ぜたそうです。最初はためらいがあったものの、今ではすっかり習慣になっていると話します。

「鍋を混ぜるたびにおたまに持ち替えるのがストレスでした。包丁は食材を切るたびに洗うので、どうせなら洗い物もひとつ減らせるし、野菜を切りながら混ぜられて一石二鳥なんです」

危なくないのかと尋ねると、「慣れました」と即答。家事における安全性と効率性の狭間で、Sさんが選んだのは時短の道でした。

■お掃除ロボットは我が家の家政婦さん

▽東京都在住Tさん(40代)

Tさんは、小学1年の息子と3歳の娘を育てる母親です。子どもたちがテーブルに落とすパンくずなどを掃除することをやめ、「お掃除ロボットに吸わせる」ことを選んだと語ります。

「掃除してもまた汚れる。まさにイタチごっこなんです。だったら、いっそ床に落とす行動そのものを肯定してしまえば楽だと思ったんです」

驚くのはここからです。子どもが切った爪も、その他のゴミも【拾わずそのまま放置→お掃除ロボットが吸い取る】というルートで処理しているとのことです。

「お掃除ロボットは掃除機以上の存在です。センサーでごみを感知して、時間になると自動で掃除してくれる頼もしい家政婦さんのようなものです。子どもたちにも『床に落としていいよ』と伝えています。水拭き対応のロボットも今後導入する予定です」

合理化を極めたこのスタイルは、もはやお掃除ロボットを中心とした家庭内エコシステムとも言えるかもしれません。

■レトルトソースは温めない主義

▽大阪府在住・Oさん(30代)

Oさんは料理の温度にもこだわらなくなったと語ります。「猫舌の夫がアツアツの料理を嫌がるので、せっかく作っても冷めるまで待っている。それなら最初から温めなくてもいいのでは?と考えたんです」

それ以来、食品庫から取り出したレトルトのパスタソースを湯せんせず、そのまま麺にかけて提供するようになりました。もちろん、麺は百円ショップで購入した電子レンジ用の容器で茹でています。夫からは何の指摘もなく、習慣として定着しています。

さらに「ガス代も節約できるし、洗い物も減る」と語るOさん。そこには愛情ではなく、時間の再配分という明確な哲学がありました。

■ツリーもお雛様も四季を越える通年インテリア

▽千葉県在住・Tさん(50代)

Tさんは、年末年始やひな祭りの行事が終わっても装飾を片づけないといいます。

「クリスマスツリーはフェイクグリーンとして一年中飾っています。お雛様や兜飾りも、和室の箪笥の上に和風アートとして飾っていて、季節を問わず楽しんでいます」

片づけの手間を省くだけでなく、常設することでむしろ愛着がわくようになったと話します。

「七夕の時期にはツリーに短冊をかけたりして、季節感はバラバラ。でも、それが我が家らしさなんです」

ズボラとアートの境界線は、意外なところに存在しているようです。

■「ズボラ=怠惰」ではない、新しい合理性

あなたのズボラエピソード教えてください

▽我が家は無洗米しか買いません。(埼玉県・50代)

▽まな板は使わない。牛乳パックを軽くすすいだものを開いて使う。ボールも使わない。フライパンの中でハンバーグのタネを混ぜてその中で成形、もしくはフライパンいっぱいに広げて焼き、食べるときに切り分ける。(栃木県・30代)

▽キッチンのカウンターの上の水滴を洗い物をした後、手のひらで拭いています。何回もやっていれば綺麗になっていきます。(東京都・40代)

▽子どもが学校から持ち帰る上履きは洗いません。なるべく持って帰らないように伝え、汚くなったら、安いのを買うことに決めています。(福岡県・30代)

▽朝、卵とウィンナーを焼いたフライパン、残った油がまだ使えるしフライパンもきれいだし、昼か夜何か作るときに使おうとコンロの上に出しっぱなしです。でも昼も夜もコンビニや外食で済ませることもあるため、次の日の朝使うことになることもあります。(愛知県・30代)

▽洗濯物は畳まずに、取り込んでソファーの上で山になった状態から自分の着るものを引っ張って探します。(北海道・40代)

   ◇   ◇

家事を完璧にこなすことよりも、毎日を無理なく楽しく過ごすこと。そうした新しい価値観が、今の家庭のなかに静かに、しかし確実に根づいてきています。限られた時間とエネルギーをどこに使うかを見極め、あえてやらない、やるけど最善の選択をしている人々は、現代的な家事戦略家と言えるでしょう。

(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)