生まれつき体の色素が作られにくい「アルビノ(眼皮膚白皮症)」は、指定難病。髪や肌が白いという見た目の特性にスポットが当てられやすいが、当事者は見えづらさや紫外線に弱いなど、目に見えない症状との向き合い方も考えていかねばならない。
小学2年生のりっくん(8)(8._.brothers)は、アルビノだ。母親の憂さんはインスタグラムで我が子の日常を配信しつつ、アルビノに関する知識を広めている。
■出産日に我が子が「アルビノ」であると分かって…
りっくんの場合は妊娠中の超音波検査では異常などはなく、出産直後に産科医から「アルビノではないか」と告げられた。「あまり日光に当てないほうがいい」とアドバイスされたが、詳しい説明はされなかったため、母親の憂さんは不安を抱いたまま退院した。
退院後は、すぐ大学病院の皮膚科へ。医師は医学書を見せながら、アルビノに関する知識を教えてくれた。当時、その病院ではアルビノの診断例がなかったため、複数の医師が集まり、りっくんの写真を撮ったという。
我が子がアルビノであると確定した時、憂さんは不安と罪悪感を抱いた。アルビノは、どんな遺伝子を持っているかによって特性の出方が違う。りっくんの場合は遺伝子検査により、メラニンをほとんど作れない最も重度のタイプ「OCA1A型」と分かった。
もしかしたら、目が見えないかもしれないし、歩けないかもしれない。姉弟と同じように生活できるのだろうか--。憂さんは真っ暗な部屋でりっくんを抱きしめ、「ごめんね」と泣き続ける日々を送った。
■当事者会で“リアルなアルビノ当事者の姿“を見たことが転機に
前を向くきっかけとなったのは、SNSで見つけた「九州アルビノ会」との出会い。当事者やその家族と実際に会い、ネットで得た情報とは違う“リアルな暮らしぶり”を知り、肩の力を抜くことができた。
アルビノは紫外線から体を守るメラニン色素が少ないため、日光で火傷をする人もいるという。ネットで出てくる情報も、長袖・長ズボンで徹底した遮光をする必要があるというものばかりだった。
だが、当事者会の参加者は半袖で過ごせており、普通の学校生活や自分らしい社会人生活を送っていたという。
「そういった姿を見たり、お話を聞いたりしたら、未来が見えないという不安が和らぎ、『この子も、きっと大丈夫』と安心することができました」
また、りっくん自身が「白い自分が大好き」と言ってくれたことも大きな転機に。その言葉を聞き、憂さんは「アルビノの特性はこの子らしさであり、この子の強み」とも思えるようになったのだ。
■アルビノの息子を持つ家族が心がけている対策とは?
とはいえ、りっくんを守るために日常の中で工夫していることは多くある。例えば、外出前には必ず日焼け止めを塗る。肌に与える刺激を考慮して、日焼け止めは紫外線吸収剤不使用(ノンケミカル)でSPFが高いものを選んでいるという。
「外出時は、帽子も被せます。長時間、外に出る時やこまめに日焼け止めを塗り直すのが難しい時には長袖を着せています」
また、小さな頃から変わらずある見えにくさや眩しさにも対処している。目の色素の不足により、りっくんの視力は0.15ほど。黒板やモニターは見えにくく、見たいものを見るのに時間がかかる。強い光を感じると、目が疲れてしまうという。
「教室は眩しくて、テレビが窓際にあるから見えにくい。一番前の席だけど黒板がよく見えないから、授業についていくのが大変な時がある。体育も、外は眩しいから中のほうがいい」(りっくん)
アルビノは、現代の医学では根治が難しい。そのため、定期的に眼科で見え方の検査を行いながら、メガネや単眼鏡(片目で見る望遠鏡)を使うなどして、学習面での困難をできる限り解消している。
憂さんが自身の髪を赤く染めているのも、外出時に姿を見つけやすいように…との想いからだ。
「家族で出かける時は大きく手を振る、声で居場所を知らせたりするなど、少し大げさに行動しています。段差などでは、上の子たちが自然に手を取って歩いてくれることもあり、頼もしく心強いです」
■「アルビノ」という区分で福祉支援が受けられない当事者のもどかしさ
りっくんの日常がより豊かで快適なものになるように家族は多くの工夫をしているが、その一方、アルビノ当事者に対する福祉支援の在り方はまだ十分とは言えない。
なぜなら、アルビノという体質そのものに沿った福祉支援を受けることが難しく、弱視や視覚障害という枠組みの中で支援を受けているのが実情だからだ。
「現れている症状や特性が障害にあたるか難しいと判断されて、必要な支援がすぐに受けられないこともあります。同じアルビノ当事者でも困りごとや必要なサポートには個人差があるので、状況に応じて柔軟に支援を受けられる社会になってほしいです」
アルビノだからといって特別視するのではなく、その子自身を見て特性を理解してほしい。そして、みんなと同じように生きている人として見てほしい--。そんな願いも込めて、憂さんはSNSでのりっくんの日常を積極的に配信している。
「みんなから『なんで白いと?』と聞かれることは嫌じゃないし、傷ついたこともない。僕はこの色が大好き。きれいやけん、いいなって思っとる」(りっくん)
アルビノの人は心ない視線や言葉を向けられるだけでなく、過度に神聖化されてしまうこともある。褒め言葉のひとつとして、私たちはそうした言葉をかけてしまいやすいが、当事者の中には神聖化されることで壁を感じ、苦しくなる人もいるはずだ。
りっくんがずっと自分を好きでいられるよう、シンプルな「かっこいい」や「かわいい」を贈り続けていきたい。
(まいどなニュース特約・古川 諭香)