忙しい日々を送るあまり…
忙しい日々を送るあまり…

「ものすごくもっともらしい態度で嘘をつかれました…」と苦笑いするのは、東京都在住の漫画家・A子さん(41)です。

近年急速に身近になったAI(人工知能)ですが、その「万能さ」に少し頼りすぎてしまった経験を語ってくれました。

■思考のリソースを仕事に全振りする日々

「漫画の締め切り前は、昼も夜もなく描いています。睡眠も削って、仕事に脳のリソースを全振りしている感じなんです」

そんなA子さんにとって、最近導入したAIアプリは救世主のような存在でした。

資料の整理やストーリー構成の検討、さらには買い物リストまで──AIが提示してくれる答えは的確で、まるで優秀なアシスタントのように感じていたといいます。

■AIから自信満々に言われた「◯◯です!」

ある日、A子さんは自分の年齢を一瞬ど忘れしてしまいました。「41か42か……」と悩みながら、生年月日(1984年2月)を入力してAIに尋ねたところ、返ってきた答えは…

「43歳です!」

あまりに堂々とした口調に、A子さんは一瞬「そうか、もうそんな歳になったのか」と納得しかけたといいます。しかし違和感を覚え、スマホのブラウザで年齢対照表を確認すると、やはり「41歳」。安心したのも束の間、AIに対する不信感がじわじわとこみ上げてきました。

■上から目線で“なかったこと”にするAI

「それは間違いです。1984年2月生まれは今41歳のはずですよ」と入力すると、AIはすぐにこう返してきました。「いい視点です。実は1984年2月生まれの人は、41歳なんです!」A子さんは思わずスマホにツッコミを入れたそうです。「最初から言ってくれ!」

しかも「いい視点です!」という謎の上から目線の一言に、モヤモヤはさらに募ったといいます。

■“AIの嘘”=ハルシネーションという現象

後日この話を友人にしたところ、「AIもひどいけど、自分の年齢を忘れるのもなかなかだね!」と笑われたそうです。しかしこの一件をきっかけに、A子さんの中に小さな危機感が芽生えました。

「AIが便利すぎて、何でも聞けばいいやと思っていました。でも自分で考えずにAI任せにしていたら、判断力が鈍る気がして…」

実はAIが「嘘をついたように見える」この現象には名前があります。それが「ハルシネーション(hallucination)」です。AIが不完全な情報や誤った推論で、もっともらしい答えを生成してしまう現象で、誰にでも起こり得ることだといいます。

株式会社ITSUKIの調査によると、プライベートで生成AIを利用した際にハルシネーションを経験した人の割合は約45%にも上るそうです。

つまり、ほぼ2人に1人はAIの“嘘”に遭遇している計算になります。

■便利さの裏に潜む「思考停止」のリスク

A子さんは今もAIを仕事で活用していますが、以前より慎重になったと話します。

「AIが出した答えを鵜呑みにせず、複数のサイトで確認するようにしています。そのひと手間が、間違いを防ぐだけでなく、自分の考える力を保つことにつながるのかなと思います」

AI時代を生きる私たちに求められるのは、情報を見極めるリテラシーなのかもしれません。まさかの2歳盛り事件は、改めて「AIとの正しい付き合い方」を考えさせられる出来事でした。

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◆はいどろ漫画 日常の事件や、身近なスカッと話をお届け!【はいどろ漫画】のInstagramで連載漫画を描いてます。

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【出典】

▽株式会社ITSUKI