営業職の夫と小学4年生の息子とともに暮らす専業主婦のAさん(30代)は、平穏な生活を送っていました。夫や息子との関係も良好で、これまで大きな家族のトラブルにも遭遇したことがありません。しかしそんなAさんに、試練は突然訪れます。それはある日にかかってきた息子が通う小学校からの電話がきっかけでした。
Aさんが電話にでると、息子の担任教師から「息子さんが授業中に隣の席の子をからかって泣かせてしまいました」と、思いもよらない報告をするのでした。
その後の教師の説明では、息子が問題を起こした理由は語られなかったため、Aさんはとても納得できません。その結果、Aさんは「息子のことをきちんと見てくれていないのでは?」と教師に対する怒りが募り、ついには校長先生に電話し、さらに翌日、教師と話すために学校を訪ねます。
学校を訪れたAさんは、「一方的に息子が悪いと言われて納得できません」と、教師に向かって廊下で声を荒げます。さらに帰宅後も気持ちが収まらず、クラスの保護者が集まるLINEグループに「うちの子が誤解されている」と投稿するのでした。
このLINEグループでの投稿は一気に拡散。翌日からAさんの息子はクラスの噂の的に。クラスの友達たちからヒソヒソと話をする状態に嫌気がさした息子は、家に帰ると泣きながら「学校行きたくない」とAさんに訴えかけます。この状況になってAさんは、ようやく自分が行動が息子を苦しめてしまったことに気がつきました。
Aさんのように感情的になって大きなトラブルに発展しないようにするには、どのようなことに注意するべきなのでしょうか。スクールカウンセラーのまるさんに話を聞きました。
■「過剰な要求」や「先回りの配慮」が子どもを苦しめる
ー親が過干渉になったり、要求が強くなりすぎたりすると、子どもの心理や人間関係にはどんな影響がありますか?
子どものためを思う気持ちが強すぎるあまり、クラス編成に過剰な要望を出したり子どもの交友関係に自分も一緒に入ろうとしたりするケースがよくあります。
子ども自身がそうした親の姿に違和感を覚えても、親との関係を悪くしたくない思いから我慢をしてしまいます。
そうした我慢の積み重ねがストレスとなり、身体症状として出てくる子どももいれば、反抗的な態度として出てくる子どももいます。子どもの人間関係では、「あの子に関わると親が出てきて面倒だから……」と、少しずつ子ども同士の距離が生まれるケースもありました。
ー“子どものため”と思った親の行動が、結果的に裏目に出ることはありますか?
”子どものために”と先回りして環境を整えても、子どもから話を聞くとそうした配慮は望んでいないということはよくあります。たとえば、「来年度は絶対仲良しの〇〇さんと同じクラスにしてほしい」と強い要望を親が学校に出しても、子ども自身はその子とはもう仲良くなくて望んでいない、ということがありました。
ー子どもが学校でトラブルを起こしたとき、保護者はどのようなステップで対応するのが望ましいでしょうか?
まずは、担任に連絡を取りトラブルの詳細を確認することが大切です。担任との関係があまりよくない場合は、学年の先生に相談してみてもいいと思います。地域によっては相談の窓口となる先生を配置している学校もあるため、そうした先生を頼るのもおすすめです。学校に直接は言いにくいようでしたら、スクールカウンセラーに相談してみてもいいかもしれません。
いきなり管理職に相談してしまう保護者も時折いますが、そうすると担任との関係が悪くなることもあるため、管理職への相談はどうにもならなかった時の最終手段だと考えていただくといいと思います。
ー教師の目線から見て、学校で保護者への対応が難しいと感じるときはあるのでしょうか?
学校の状況によってできる支援の幅が異なるため、そこを保護者にご理解してもらいつつ、納得できる支援を見つけるのは何年経験しても難しいです。保護者の望む対応が、学校の状況的に難しいときにいかにして妥協点を見つけていくかを探ることが大切だと思っています。
ー教師との信頼関係を保つために、保護者が意識しておくとよいコミュニケーションはありますか?
一方的な要求を伝えるのではなく、子どもが安心して生活するために一緒に協力したいという姿勢を意識していただくといいと思います。
◆まるさん
関東近郊にてスクールカウンセラーとして10年以上勤務。これまでに500人以上の保護者や子どもの相談を経験。その経験を踏まえてすくかうぶろぐにて、保護者の困りごとを解決する記事を発信中。
▽ブログ「すくかうぶろぐ」
▽関連記事「学校でのトラブルをどう解決する?モンスターペアレントにならないための心構え」
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
























