元セクシー女優のフリーライター・たかなし亜妖
元セクシー女優のフリーライター・たかなし亜妖

夜のお店に通うお客さんたちが、どんな職業に就いているかは誰もが気になるもの。月に数回、料金を抑えて遊ぶ人なら「ちょっと収入が良いのかな」くらいにしか思いませんが、1度の会計が3~4ケタ万円を超える人に対しては「何者!?」という目を向けてしまうはず(笑)。

もちろんビジネスで大成功をおさめた経営者などもいますが、コワい人々も蔓延しているのが繁華街なので、働く人々は注意深く客とキャストという関係を築かなければなりません。

そんなお客さんの中には、足繁く通った末に「一緒にビジネスをやらない?」と、女の子を誘う話はよくあります。しかし、この手の勧誘は高確率で黄色信号です。大金を支払う=純粋なお金持ちとは限らず、その裏にはアヤしい事情が渦巻いています。

■夜のお店に現れる詐欺師、1000万円をだまし取られた

キャストにとって売り上げを支えてくれるお客様は人間性がどうであれ(笑)、とてもありがたい存在でしょう。かといって心を許し過ぎてはならず、踏み込み過ぎるのもNGです。理由は彼らが一体どんな仕事で儲けているか、不透明な場合も多いからです。

キャバクラで働くAさん(仮名・28歳)はM也さん(仮名・年齢不詳)に売り上げの半分を依存していました。毎回会計は数百万を超え、サプライズで目玉が飛び出るほど高価なお酒を入れてもらうなど、彼は立派な“太客”だったのです。

そんなある日、Aさんの誕生日イベントを終え、一息ついたところでM也さんから「将来、どうするつもりなんだ」と真面目なお話が……。どうやらアラサーに差し掛かる彼女の姿を見て、心配になってしまったとのこと(以下『』内、Aさん談)。

『夜の世界でアラサーはおばさん扱いなので(苦笑)それに、私は夜しか職歴がありません。M也くんは売り上げだけじゃなく、私の将来や私生活まで気を遣ってくれたんですね。バースデーが終わった後、“Aの未来を応援したいから、オレの新しく始めるビジネスに協力してくれないか”と、話を持ちかけられました』

決してM也さんの恋愛感情を持っていたわけではないものの、人柄の良さにジーンときた彼女。28歳を迎え先々の不安を覚えたため、周りに相談せず誘いに乗ってしまったのです。

新たなビジネスとは、コンカフェの出店でした。いずれは経営側に回るのを前提として話が進み、共同出資という条件付きです。所謂“雇われ”ではなく、「いち経営者としてやってほしい」というのがM也さんのお願いでした。

『私も雇われママみたいなのはイヤでしたし、かといってコンカフェ経験もないから1人は不安で。共同出資で頑張るのは大いに賛成で、疑いもせずポンッとお金を出してしまったのです。金額は、1000万円。高すぎない?って思ってたんですけど、いろいろ言われたら“その気”になっちゃった自分がいて……』

■太客の正体とパァになった1000万円の行方

共同出資で片方が1000万円、「コンカフェでそんなにお金が必要なのか」と疑問に感じたAさん。しかしM也さん曰く制服や内装にこだわり、人件費もかかると説得され、鵜呑みにしてしまったとか。

お金を預けてからも話は進みましたが、ある日突然連絡がつかなくなります。LINEは退会、電話は通じず、家を尋ねても彼の姿はありません。オフィスと呼ばれていた雑居ビルの一室も退居済みになっていたという、まさかの事態に。この時、初めてAさんは詐欺に気づきました。

『夜の街は口が軽い人たちが多いから、ビジネスの話はわざと誰にも漏らさずにいたんです。邪魔とか入ったら困るしで……。でも、騙されたショックで頭が真っ白になり、知り合いに連絡をしまくりまして(笑)そしたらツテで他店の女の子と繋がり、彼が他の街で指名嬢にビジネスの話を持ちかけていたことが明らかになりました』

M也さんは歓楽街で有名な極太客ではなかったものの、一部では顔を知られていたようです。正体は情報商材とFXで荒稼ぎする、なかなか“グレーゾーン”な人物。ここ1年ほどは収入が下がり「彼から貸したお金が返ってこない」と嘆く人さえ現れました。

『詳しい人に調べてもらったら彼の会社も存在しておらず、どこまでも“架空”だったのです。もっと早く周りに相談していれば、損をせずに済んだだろうな……。夜歴長いのに、あっさり人を信じて騙された自分が恥ずかしいですよ』

噂によると彼は遠方に飛び、別の歓楽街でお金をばらまいているとか?真偽は不明ですが、彼女のお金はそちらに流れているかもしれませんね……。

Aさんの場合は1000万円でしたが、中にはもっともっと多くのお金をだまし取られた人もいます。キャストの懐を狙う詐欺師は、いつの時代も歓楽街にはびこるのです。

「なぜ人を簡単に信じるの?」と第三者は言うけれど、渦中にいると感覚が麻痺し、正常な判断を下せないこともあるでしょう。悪い人間はそんな人間の弱みや隙を狙います。夜の街で働くキャストはもちろんのこと、一般社会で生きるオトナも気を付けねばなりませんよ。

◆たかなし亜妖(たかなし・あや)
元セクシー女優のシナリオライター・フリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ゲーム会社のシナリオ担当をしながらライターとしての修業を積み、のちに独立。現在は企画系ライターとしてあらゆるメディアで活躍中。