子どもの性被害…「子どもを守り大切に育むために、国が率先して何をすべきかを示してほしい」と、塚原さんは訴える(photoACより「ペコムク」さん撮影、イメージ画像)
子どもの性被害…「子どもを守り大切に育むために、国が率先して何をすべきかを示してほしい」と、塚原さんは訴える(photoACより「ペコムク」さん撮影、イメージ画像)

「皆様ご報告です。私達姉弟をレイプした実父。以前から私達姉弟の誹謗中傷と侮辱をしていて被害届を出していました。今警察から電話がきて今日事情聴取をしたところ『本人が自分がやりました』と認めたので刑事告訴出来る事になりました。・・・」

※本記事には性暴力・虐待に関する記述が含まれます。読了可否をご自身のペースでご判断ください。記述はご本人の証言・主張に基づき、手続は進行中です。

■「一矢報いた」告訴決断の背景

X(旧Twitter)で実父による侮辱・誹謗中傷について刑事告訴の見通しが立ったと報告した、一般社団法人PCASA JAPANの塚原たえさん(@otae1211)。塚原さんは9~17歳に受けた性・身体的虐待は時効で刑事手続に乗せられない一方、2024年5月以降のSNS上の中傷をめぐって被害届を提出。次のように経緯を語ります。

「実父本人はポスト上で『(性被害が事実でも)もう時効』と開き直っています。悪かったという意識が全くない。だからこそ、いま現在続く加害(侮辱・誹謗中傷)で法に訴えると決めました」

中傷の内容は、塚原さんや自死した弟を「知恵遅れ、精神薄弱者」と書いていたり、「塚原たえが言っている事は嘘で親や兄弟を使って売名行為をしている。皆んな気を付けろ」「たえは自分で体を洗わず自ら風呂に入ってきていた、夫婦で泣いていた、体を洗ってやっただけだ」など、差別的表現や性虐待を正当化したものだとか。「この程度だと告訴は微妙」との説明を受け、法制度への怒りもこみ上げたといいます。

■捜査の進展 相談から「本人が認めた」まで

・5月:所轄へ相談
・7月:被害届を提出
・9月:警察から「近日中に実父から事情聴取」の連絡
・10月:警察から「本人が『自分がやりました』と認めた。刑事告訴できますか?」と確認があり、塚原さんは即答で「当然します!」

「『また法の甘さですり抜けるのでは』という不信感が先に立ちました。私を悪者にしたい構図は、子どもの頃と変わっていないと感じたのです」

担当刑事の「我々も法に基づいてしか動けない」という言葉も印象に残ったとし、現行法の適用範囲の狭さ(侮辱に当たる表現と当たらない表現の差)に驚いたと述べました。

■「子どもの人権がない」 時効が生む“差”

性被害は裁けず、侮辱は動く--この法的ギャップについて。

「根っこは『子どもの人権が軽視されている』こと。未成年期の被害は親権の壁で届きにくいのに、成人後の侮辱は法が動く。この歪みを是正してほしい」

必要な課題として、時効の見直し/厳罰化/加害者の管理/被害者ケア/実効性ある性教育(加害・被害の双方を生まない教育)を挙げました。

■迷いより「許せない」 支えは家族と仲間

「葛藤はありませんでした。子ども時代なら恐怖で諦めたかもしれない。でも今は家族とサバイバーの仲間がいます。『実父を許せない』気持ちしかありません」

長く「生きる」ではなく「息(いき)てきた」と表現し、サバイバーには「頑張らないで、まず“息”をして」と伝えているとも語りました。

■なぜ発信を続けるのか

警察から発信の抑制を指導される場面もある中、あえて公表を続ける理由。

「怒りの行き場がない人に、闘って尊厳を取り戻せると示したい。私個人の話に留めず、社会を動かすためでもあります」

報告後は「『あなたは一人じゃない』と声をかけてもらえるようになった」と支えの広がりも実感しています。

■「これは序章」 民事も検討

「侮辱罪は“今の加害”を問えますが、本丸の性被害は時効。区切りというより序章です。必要なら民事も含め、やれることは全てやります。本当の区切りは、性被害に法が応える時です」

■社会・司法・メディアへの提起

「法整備・時効撤廃・厳罰化・加害者管理・被害者支援・性教育の更新。これは国だけでなく社会全体の課題です。子どもの自死増加の背景にも、可視化されない性被害があるのではないか。真剣に考え、行動を」

いま最も望むこととして、上記“すべて”の実現を挙げ、「子どもを守り大切に育むために、国が率先して何をすべきかを示してほしい」と訴えました。

■取材後記・読者の皆さまへ

被害の事実を言葉にすることは容易ではありません。必要だと感じた時、無理のないタイミングで信頼できる窓口につながってください。

・性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891 はやくワンストップ)
・警察相談専用電話 #9110
・いのちの電話(0120-783-556等 )/よりそいホットライン (0120-279-338 等)など

※本記事は塚原たえさんの投稿・取材回答を中心に構成しました。手続は進行中であり、最終的な法的評価は司法の判断に委ねられます。 

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)