宝塚歌劇団花組によるミュージカル「Goethe(ゲーテ)!」が大阪市北区の梅田芸術劇場メインホールで上演されている。主人公はドイツ文学を代表する文豪で、名作小説「若きウェルテルの悩み」を世に出すまでの誕生秘話。激しい恋を軸に、作家の矜持(きょうじ)と苦悩、切ない別れをトップスター永久輝(とわき)せあ、トップ娘役星空美咲がはつらつと演じる。花組の潜在能力の高さを見せつけた。
父の意向で法曹界に進むべく、田舎町の地方裁判所の研修生になったゲーテ(永久輝)は、周囲となじめずにいたヴィルヘルム(聖乃あすか)と友だちになる。一方、司法協会のパーティーでシャルロッテ(ロッテ、星空)に出会い、一目で恋に落ちる。作家への夢を諦めきれないゲーテはロッテのためにと美しい言葉で詩を紡ぐ。だがロッテの父は娘の将来を堅実なものにするため有能な弁護士ケストナーとの縁談を進めていた。
2021年にドイツで初演、数々の賞を受賞した本作。全編を彩るマルティン・リングナウ作曲の美しい楽曲を歌って歌って歌いまくる、「これぞミュージカル」といった作品。出演者は難しいメロディー展開も自在に操り、観客を引き込む。
中でもゲーテへの尽きぬ愛と苦しい別れを高らかに歌い上げた星空の歌唱力は特筆もの。ゲーテのもう一つの代表作、戯曲「ファウスト」に登場する、地獄からの誘惑者メフィストフェレスを演じた夏希真斗(まなと)の妖艶で力強い歌声も圧倒的だった。
永久輝は「膨大なナンバー、難しい曲にとまどったが、ゲーテが味わったであろう感情を体感し、表現できて幸せ」。11月の東京公演を振り返り、「みんなの思いが一つになれば、芸術を通してつながることができる」と喜びを語る。
ドイツから来日したステージエンターテインメント社アーティスティック・プロダクション・ディレクターのシモーネ・リンホーフは「宝塚歌劇団で上演されて、この作品がもう一つ高みに上がった」、オーケストレーションのセバスチャン・デ・ドメニコは「(女性だけなので)音域が半分になるのかと思っていたが、むしろ作品自体がより豊かになった」と絶賛した。
11日まで。3、8日休演。(片岡達美)
























